クスクスを初めて食べたのは、その昔フランスに住んでいたころのことだ。
安いモロッコ料理の店だったと記憶しているが、たぶんラムの煮物らしきものと一緒に出てきたそれは、「まるで洗面器に入った鳥の餌」という印象をわたしに残した。さほど美味しいとは思わなかったとみえて、スイスに住んでいたときもタイに住んでいたときも、自分で調理したことはない。
頻繁に作るようになったのは、オーストラリアに住み始めてからだ。
最初は基本どおりのバターだの塩だのスープストックだけを加えた「付け合せ」だった。が、スーパーでクスクスを探していたら、色々なスパイスを加えたものが「インスタントクスクス」として売られている。一応パスタなのだから、なんか混ぜてもいいのではないか、と始めたのが「がび流ベジタブルクスクス」だ。改良に改良を重ねていったら、誰に出しても美味しいと言ってもらえるようになった定番だ。
使う野菜は、歯ごたえのいいものがイチバンだ。
ゴロゴロと大きめのものを入れるのもいいが、わたしは目の粗いオロシ器(こちらでは、これしかない)で、適当に切ったカボチャとズッキーニをがりがりと削ってしまう。和製のものでおろしちゃうと、全て「大根おろし」になるので、だめ。
セロリと玉ねぎは削らずに、うすくスライスする。あくまでも歯ごたえ、歯ごたえ。
フライパンにオリーブオイルを熱して、大量の「削り野菜」を軽くしんなりするまで炒める。その間にステンレスのボウルにクスクスを入れる。熱湯をそそいでフタをし、約5分。水分を吸い終わったところで、ほくほくとほぐす。ここに、炒めた野菜をどっさり加え、さくっと混ぜる。
これだけじゃあどうもたんぱく質不足なので、冷蔵庫にあったメカジキ(ソードフィッシュ)もコロコロに切って、ニンニク、クーミン、パプリカ、唐辛子とともに炒めて上に乗せた。ついでに、ギリシャ風こってりヨーグルトを上からたらりとたらして、気分はやはりエキゾチック、なんてね。