がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

トマトとキャラウェイのダンパー

オーストラリアン・ダンパー(Australian Damper)と言っても、わかるひとはあまりいないだろう。ほんの250年ほど前に開拓者が未開地に入ったとき、焚き火でパンを作りだしたのが始まりらしい。ミルクの代わりにビールを使っちゃったり、小枝にパン種を巻きつけて、まるでマシュマロのように焚き火にかざして焼いたり、適当な枝が見つからないときはシャベルで焼いたりと豪快きわまりない。現代でもそうやってキャンプしてダンパーを焼くひとがいるわけで、この言葉を知らなかったらオーストラリアに住んでいるとは言えない。

20050612わたしはもちろん虫がダイキライなので、キャンプなんぞ御免こうむる。だが、ダンパーは簡単なので、実はよく作るのだ。いや、焚き火ではなくオーブンで。
わたしのように速いだけが取り得の料理人には、ハナハダ便利なものがこちらにはある。Self-rising Flourという、もうぜんぶ混ぜてある小麦粉のことだ。1カップの粉にベーキングパウダー小さじ1.25杯と塩ひとつまみ加えて混ぜる過程が省略できる。
これを3カップ(オーストラリアの1カップは250ml)に、塩とキャラウェイシードを小さじ一杯ずつ加えて軽く混ぜる。ボウルの真ん中を丸く掘り、そこに何と即席トマトスープ(電子レンジでチンするだけのもの、300ml)をじゃぶじゃぶとそそぐ。ミルクの代わりにビールを使うくらいなのだから、この際「ミズもの」なら何でもいいのだ。ミルクをさらに半カップ加えて、ナイフで小麦粉の壁をくずしながらさくさくと混ぜ合わせ、小麦粉をふったテーブルで丸く形を整え、オーブントレイに移し、また粉をはらはらとかけて十文字をささっとナイフでかき、200度に温めておいたオーブンへ。30分から35分くらい待てば、ぷうとふくれたこんな感じのパンが出来上がる。

パンは難しいと思っているひともこれなら簡単に出来るし、何よりも出来立ては美味しい。猫のゆきちゃんと一緒にヒーターの前に陣取り、トマトの香りただようパンを温かいうちにほおばる。冬の寒い日曜日も何のその。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です