一年ほど前のことになるが、わたしは生まれて初めて「スピード違反」を犯した。
学校から帰る途中、スワン川に沿って数キロに渡る一直線の道路がある。ちょうど薄暗くなる時間帯で、車もほとんど見当たらない。結構見晴らしがよいのにもかかわらず、その黒いカメラが芝生のど真ん中に立っているのにうっかり通り過ぎてしまった。そして、フラッシュ。その時初めて、何が起きたのかに気づいた。残りの道のりを、自分に向かってありとあらゆる悪態をつきながら帰ってきたが、後のマツリである。普段ほとんど制限速度を超えたことさえないのに、ちょいとアクセルを踏みこんでしまった魔の一瞬だった。
そして数週間後、わたしのところへではなく、「わたしの車の前の持ち主」のところに西オーストラリア道路・鉄道企画省(交通違反はここの管轄だ)からの「スピード違反」宣告書が届いた。なんらかの手違いでそちらのほうに行ってしまったらしい。その「前の持ち主」というのがわたしの友達だったため、わたしもその手紙を見ることができた。
罰金額は日本円にして1万円ちょっと。60キロ制限のところ、わたしの速度は70キロを超えていたため、減点もされている。こりゃ、マズイ。10キロ以下のスピード違反だたら罰金も半額だし、減点もつかなかったのに。またしても、ありとあらゆるノノシリ言葉が口をついて出そうになったが、友達の前だったので何とか喉に戻しこむ。
請求書には、ご丁寧にわたしの写真までついていた。日没後のうすぐらい時間ではあったため顔はわからないが、顔から上半身のハンドルを握った「姿」は間違いなくわたしだ。金髪でわたしより10センチほど高い友達とは、似ても似つかない。
どちらにしても友達ではないことは確かなので、そのよし手紙に記して請求書を送り返しておいてくれるという。わたしの住所と運転免許証番号も加えて、わたしもサインまでした。そして、そのうち変更された請求書が届くだろうと待った。
ところが、気がついたらもう年が明けている。わたしのスピード違反は、一体どこに行っちゃったのだろう。まさか、またも手違いで「罰金不払い」の犯罪にまで発展してるんじゃないだろうか。そう思ったら怖くなり、友達に電話した。「それって、省のホームページで確認できるよ」
運転免許証番号と氏名を入力して待つだけで、簡単にそうした「その免許保持者の交通犯罪歴」がチェックできるのだ。で、目を皿のごとくして調べたが、わたしのデータに犯罪歴はなし、と出た。友達も調べたが、同じ結果だ。ということは、友達のデータからはそのスピード違反歴は抹消されているわけだ。しかしその抹消した時点で、普通はわたしの違反歴が出現するんじゃないのか。不思議だ。
コンピューター処理の問題なのだろうから、いつかは送られてくるのだろう。が、それにしても気の長い話だ。スピード違反を犯した本人でさえ、忘れちゃうほどの時間がたっている。住所まで記載した「実はわたしの違反でした」という手紙は、すでに一年前に送られているにもかかわらず、だ。請求書が送られてきたらもちろん黙って支払うし、減点も甘んじて受け入れるつもりだが、今でも首をかしげる毎日である。
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初めまして。パースで暮らしていた時に何度かスピード違反で捕まりました。写真付きの違反通知書みたいなものがレンタカー会社に届いていたので警察に電話したら、たらい回しにあい、めんどくさくなりそのまま放置しました。数ヶ月後そして帰国後日本に請求書が届きました。仕方なくネット経由で支払いを済ませました。忘れた頃にやってくるのがパースクオリティです。
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はじめまして。パースに住んでいらしたんですね。
WA警察がそんなに執念深いとは知りませんでした。日本にまで、しかも国際郵便料金まで支払って、送ってくるんですか。ただ、ただ、アタマが下がります。しかし、あれだけネズミ捕りを仕掛けているんだから、たぶんものすごい数なんじゃないかと思います。それを気長に何年も前のものから段々と片付けていっているスタッフがいるってことですかね。すごいなあ。「のんびりパース」もここまで来ると、ただ感心。