がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

わたしと車の感に堪えない関係、再び

わたしは車オンチである。それは否定しない。車なんてモノは、走って行きたいところに連れていってくれるならわたしは満足なのである。うん。
だから、DかRかP以外のアルファベットがついているギアで何ができるのかさえ見当もつかない。

まあ、そんなわたしの車オンチ話は、「わたしと車の感に堪えない関係」ですでに10年前に恥をさらしている。

その後も色々あり、最近ではショッピングセンターの駐車場でバイクのオニイサンに「ちょっとジャンプスタートさせてくれない?」と頼まれ、何のことかわからず「へ?」と訊いた。つまりそのバイクのバッテリーが上がってしまったので、わたしの車のバッテリーに繋いでエンジンをかけさせてくれ、ってことだったのね。へえ…。
で、「じゃ、ボンネット開けて」と言われて、「どうやって開けるの?」と訊いたものだから、オニイサン、なんて無知なヤツをつかまえてしまったんだ、という顔をして、自分の頭をわたしの車の運転席に突っ込んですぐに見つけたボタンを引いたか押したかしたら、ボンネットがパカーンと開いた。へえ…。
やっとこバイクをスタートさせたオニイサンは、丁寧にお礼を言った後「でも、ボンネットぐらい開けられたほうがいいよ」と笑って、爆音とともに去っていった。そして、わたしはいまだに彼がどこをどうしてボンネットを開けたのか全く知らない。

さて、今朝のこと。

今日は、ランチに外国語科の教師が全員何かを持ち寄って皆で食べよう、ということになっていた。わたしの担当はサラダだったので、いつも好評の和風ドレッシングと大きなサラダボウル一杯の生野菜を助手席に載せ、いざ出発。…ところが、50メートルも行かないうちにチーンチーンとアラームが鳴り出した。シートベルトは締めているし、ドアもきちんとしまっているし、ギアもDに入っているし、何も普段と変わったことはしていない。ところが、アラームは鳴り止まない。キイを抜いてまた入れて発進しても、同じことが起きる。何か表示がないか、と探したらデジタル時計の横で、こんな赤いマークが点滅している。Untitled

PASSって何だ?
シートベルトはきちんと締めているぞ。

どうしても止まらないチーンチーンに嫌気がさして、またもや新聞を取りに外に出てきた前の家のオジサンに「すみませーん、助けてくださあい」とお願いしてみる。以前、わたしがDにギアを入れたままでエンジンがかからなかったときにも、芝刈り機を止めて簡単に解決してくれたオジサンである。

10年後のわたしの車(そりゃ10年もたっているので車は買い換えてある)に乗り込み、車内をぐるりと見回してから、オジサンは大きなサラダボウルをおもむろに助手席から持ち上げた。そうすると…あれまあ、アラームが鳴り止んだのである。
「あのねえ、こんな重いサラダボウルを助手席に載せておいたら、車は子供でも乗っていると思うんだよ。このPASSってのはPassenger(助手席のこと)の略ね」

へー、知らなかった。こんなマークに気づいたこともなかった。

かくして、10年後のわたしは、またもや静かな生活を送るオジサンとその奥さんに「隣人についての愉しい話題その2」を提供してしまったのだった。

 

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