週末に時々友達と待ち合わせるパブでサイダー(りんごビール)を飲んでいたら、ふと道の向かい側に見慣れない看板が出ているのに気づいた。Pachi Pachi? 拍手だろうか、それとも揚げ物のはぜる音だろうか。
パブを出たあとで店の前まで行って覗いてみると、アジア風の小さなカフェスタイルだがかなり混んでいる。まだは早い時間なので空いているテーブルもあるが、そこにはすでに「予約」の文字が。それなら、と皆で次の日に行ってみようということになり、すぐに予約を入れた。酒のライセンスがないということで、ワインは白を持参。
前菜として、ビーフ・タタキ、アゲダシ・トーフ、そして鴨の生春巻きを注文した。前二品を片仮名で書いたのにはわけがある。
タタキはもう少し中がナマのほうがいいかなというミディアムレアだ。ただし、オーストラリア人にはたぶんこのくらいのほうが人気があると思う。ステーキでも事細かに言わないと必ずウェルダンかミディアムで出てくる国だ…と書くと、「いや、違う」というひとが必ずいるので、わたしの経験したレストランと友達の家のバーベキューで、と付け加えておくことにする。日本と同じ甘酸っぱいソースがかかり、下にはさらした玉ねぎが敷いてある。
アゲダシ・トーフは、一緒に行った友達には好評で「なんて美味しいんだ!」と天に向って声をあげるヤツまでいる。小麦粉を厚めにはたいて揚げた豆腐は、だし汁をかけてあり、外はカリカリ中は絹ごしなのでさらりとしている。外はカリカリ? そう、和食のように片栗粉を使って揚げていないのでトロリとした部分もなくカリカリ、確かにこういう歯ざわりのも楽しい。和食だと思って食べてはいけない、という良い見本だ。ちょっとした変化を加えたくなるほど、和食も国際的になったのかもしれない。
ただし、鴨の生春巻きは鴨が焼き過ぎで硬く、春巻きの皮の巻きが甘い。野菜をきちんと抑えて巻いていないので、手でつかむとぐにゃりと途中で曲がってしまう。付け合せのソースも油が多すぎてあまり味がない。これは少々改良が必要だ。
さて、こちらはメインの三品。
チキン・ナンバンはたぶん宮崎名物の鶏南蛮。タルタルソースの玉ねぎをすりおろすというのは斬新なアイデアだが、これはたぶん辛くない赤タマネギ(先のビーフ・タタキ)の下に敷いてあったヤツと同じ)を使ってしまったからだと思うがあまり玉ねぎらしい味がない。それに、日本だとこれにパセリが混ざっていたなあ。
続いて、生鮭のフレークを使ったタイのラープ風サラダ。美味しかったけれど、何か足りないなあと思ったら、チリだった。
もうひとつは、ゴジ・ベリーの入った野菜のオイスター炒め。時々歯ごたえのあるゴジに当たり、この味がオイスターソースとからまって微妙で美味しい。自分でも試してみようと思う味だった。
しかし、全体的に何かが足りない。
その「何か」はたぶんオリジナルの料理には入れられているダシの分量とか、パンチを添えるチリだとか、玉ねぎらしいピリリとか、アゲダシでは新鮮に感じたけれど他の皿にはなかった歯ごたえとか。アジア風カフェとしては無難にまとまっているし、値段も皿もデカイ他の料理店と比べたらとても安い。だからこそ、この店オリジナルの味にいっそう磨きをかけてほしい。サービスも行き届いていて期待できる店だけに、これからの人気が右上がりになるかどうかは「味」にかかっていると思うのだ。ただし、まだ試していない料理があるので、近いうちにもう一度行ってみたい。
そうそう、カフェとしても利用できるようで、ちょっとおもしろそうな抹茶ラテ、チャイ・ラテ、タロイモ・ラテなんてのもある。やっぱりアジア風だ。