昨日大手のデパートに行ったら、薄い水色の麻のブラウスを見つけた。麻はマメにアイロンをかけなくちゃいけないからメンドクサイなあ、と思いながらも、肌 触りのよさについつい買ってしまう。セールの洋品類として、ショッピングセンターのそのデパートの入り口に並んでいたもののひとつだが、レジは近くの園芸 道具売り場に行かなければならない。
そこのオニイサンは緑色のエプロンをかけて、いかにも庭師ですという風情だった。金髪の髪は襟足は短く額には サラサラとかかり、いやわたし好みのハンサムボーイである。何となくニヤニヤ(この場合はニコニコではない)しながら包んでくれるのを待っていると、いき なりクルクルと丸めてビニール袋に放り込んでくれたのであった。麻である。一応ハンガーにかけてあったから皺もない。それをまるで洗濯物のように「丸め て」つっこんだのだ。袋から取り出して自分でたたみたくなったが、気をとりなおしてニッコリと微笑みかける彼に笑顔を返し、遠くのホールに並んでいる椅子 に腰掛けてそれを綺麗にたたんだ。
悪気はないのだ。それに洋服売り場の店員でもない。しかし「アンタはうちで洋服ってもんをたたんだ経験はないのかっ」とちょんとつっついてみたくなる。小学生でもない一人前の男子が、シャツ一枚たためなくてどうするんだ。
そ れともこれは西洋映画の悪影響なんだろうか。どの映画でも、スーツケースに洋服を詰める場面で、きれいにたたんでいるヤツなんかいない。どばっと開けて、 たんすの中からどばっとさらった洋服をそのままぎゅうと押し込み閉めるだけである。だから、わたしはいつも「へええええ、南のリゾート地についたら早速ア イロンかけでも始めるのか、それともシワクチャのドレスでダンスに行くのか」と気をもむが、その後の場面では皆ぱりっと今ハンガーからおろしました、とい うドレスアップ姿である。
まあ、これはニューヨークのど真ん中でいつもお目当てのビルの正面に駐車できる主人公たちの幸運などとおなじ、映画の中 だけの出来事だと思っていたのだが、どうもそれを本気で信じちゃっているひとがいるふうなのだ。マミィがアイロンをかけてくれるうちはいいが、丸めて放り 込んだシャツはたんすの中だろうがビニール袋の中だろうが、ポリエステル100%でないかぎり、元に戻らない。
そんな昨日のことを考えながら、もう夏物をすっかり出してアイロンかけをした。パースは昼間の空気が生ぬるくなってきている。
肉 体労働のあとは食事の支度に時間をかけたくないので、サラダ。解凍したローストチキンを小さく切って生ホウレン草とトマトに添える。ドレッシングはさっぱ りとイタリアン風にした。これで冷たいフィノシェリーを一杯だけつぎパンをちぎりながら、「ああまた日曜日も終わりかあ」とため息をつく。