がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

「るずぱーぞぐじ」の誘惑

パティオの椅子がずずっと動くほどの暴風雨となり、水の少ない西豪州ではほっとするひとたちも多いことだろう。しかし、1日中ウチにいなければならない身 としては退屈な日でもある。「あそぼうよー」とばかりに足にかじりついたゆきちゃんを、そのままずるずると引き摺りながら、ついに書斎の片付けを始めた。 猫シッターに甘んじているわけにはいかないのだ。
しかしわたしの片付けは、始まったら最後どんどんどんどんと横道にそれていくのが常だ。「お や、こんなとこにあったんだ」「おお、それもすっかり忘れていた」「やだやだ、ナツカシイ」などと独り言を呟きながら、進むどころかだんだんと自分の回り に紙の山が増えていく。戸棚の中の整理しなければならない書類の束をどっこいしょとどかしたら、その下にこんな箱が隠れていた。

1月に10日間 ほど車で南下したときに、ひょんなことから買ってしまったジグゾーパズルである。森林の中の小さな村にある玩具屋の店先に、貸し出し用として並んでいたう ちのひとつだった。長期休暇を楽しむひとたちがその西豪州で一番古い村ですることと言ったら。。。昼間の散歩と夜のジグゾーパズルなのかもしれない。風景 やカラフルなイラストなどのパズルを眺めていたら、この箱が目に止まった。ジグゾーという言葉が反対から書かれている。要するにこの箱の表面の絵は、パズ ルの完成画像ではなく、これをもとに車の前方から来る荷馬車のオジサンの目から見た絵を想像して、完成させなければならないのだ。車の正面とか、自転車を こぐオジサンの後姿などがそこになくてはならない。なんて、ややこしいんだ。

しかし箱の角が擦り切れていたりして、結構使われたものと見える。 いや、ジグゾーパズルを完成させるというのも立派な休暇なのかもしれない。毎日の仕事に追われるフツウのひとびとが、そんなまとまった時間を普段とれるは ずがないのだ。感心して眺めていたら、店のひとがでてきて「借りる?」と聞く。いや南下する旅の途中なんで、と言うと「じゃ10ドルで、どう?」本当に全 部のピースがあるかどうかも怪しいものだが、つい安さに負けて買ってしまった。

以来、もちろんそんな「まとまった」ゆとりができるはずもなく、日々の雑用にまぎれて戸棚の隅に忘れていたパズルである。手にとったら、なんだか箱の中身を全て床にぶちまけて、とりあえず隅っこのピースから始めてみたくなった。

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