ビーツからマクベス夫人へー想像の飛躍

ビーツ(beetroot)と呼ばれるこのカブ科の野菜は季節モノなので、生でお目にかかれるのは秋と冬だけである。スイスにいたときはよく肉のつけ合わ せとして煮たものだが、こちらではもっと簡単に、アルミホイルでくるんでバーベキューしている肉の隣にほうりこんでやるだけである。ほくほくとローストさ れたそれの皮をむいてぶつ切りにすると、真っ赤な汁が皿ににじみでる。ひとくちかじると、歯ごたえのある感触とほんの少しの甘みが口に広がって、後をひ く。日本ではあまりお目にかかれない野菜だが、ロシアのボルシチというごった煮はこのビーツを使うので、マッカッカのスープとなるのだ。

手 でいくつかのビーツを剥くと、指から爪の間まで赤く染まってしまう。丁寧に石鹸をつけてその赤い汁を洗い流していたら、あろうことかシェークスピアのマク ベスの奥方を思い出してしまった。人殺しの罪の重さに耐えかねて、洗っても洗ってもぬぐい切れない血の幻覚と狂気の中でさまよう女性。「あなた、あな た。。。血がどうしても落ちないのです。。。」手をごしごしごし。
初めて日本語訳を読んだ高校生のときに、彼女の夫をけしかけるセリフからこの身の毛のよだつ情景まで、逐一目の裏に浮かぶような思いを味わった。以来、観る機会があっても、これだけはまだ実際の舞台鑑賞を経験する勇気がない。

しかし夜中にこんなことを書いてしまったら、怖くて眠れなくなっちゃうじゃないか。

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