がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

ネットで物乞い

ネット物乞いが増えているらしい。そうしたウワサはかねがね聞いてはいたが、直接受け取ったのは初めてだ。

わたしはホットメールアカウン トも持っているが、目的は元々メッセンジャー登録だった。その後色々な学校で教えるうちに、子供たちとの連絡にも使うようになった。去年教えた子たちの何 人かは今だに時々メイルをくれる。まあ半分はたわいないジョークの転送なのだが、今日受け取ったそれらのメイルに転送された「物乞い」が混じっていた。
サ ブジェクト名は「削除しないで、まず読んでください。とても悲しい話なのです。」とある。とーちゃんが病気になって、知能の遅れた3歳児をかかえて苦労し てるらしい。食べるものにも困っているし、なにしろ自分も足が不自由で満足に仕事もできない。いやはや大変である。しかし、ちゃんと私書箱まで記載されて いる。「寄付」をお願いします、とのことなのだが、用意周到である。

あるサイトで読んだのだが、こうしたネット物乞いはこれほど悲惨な家 族の話だけではなく、ただナントカが欲しいから寄付してくれないか、との軽いお願いから、学費の補助をしてくれないか、まで多岐に渡るらしい。ある二十歳 の見目麗しき女性(サイトに写真を載せたようだが、本人だとの保証はもちろんない)は、誕生日に美容院に行って髪とマニキュアをきちんとしたいと寄付をつ のったところ、しめて300ドルほど集まったそうだ。
しかし、全てが全てうまく行くわけもなく、3ヶ月でたった10ドルなんて報告もある。

と ころが、こうした話に真実味をもたせて大もうけしようというヤカラが必ず出てくる。アメリカでは、23歳の学生が余命いくばくもない癌末期患者のふりをし て何千ドルもの寄付を手にしたが、詐欺罪でつかまった。学生が勉学にいそしまずに、安易な金儲けに手を染めるなんざ世も末である。

煙草を 吸っていたころには、ヨーロッパでよく「1本ちょうだい」などとねだられた。東京の新宿駅では、券売機の前で「ちょっとカンパしてもらえますかー」と目を 伏せた若いひとに乞われた。オーストラリアでは、繁華街で、アボリジニと見られる男性に酒を買う金を少し恵んで欲しい、とささやかれた。

見知らぬひとに物乞いをするのは、一種勇気のいることではないかとも思う。こちらから直接通りすがりのひとびとに面と向かい金やモノをねだっても、返ってくる言葉が必ずしも暖かいものとは限らないからだ。自尊心をねじまげなければならないときもあるだろう。
そ の点、ネットでは恥もかかない。誰かが金を送ってくれたらそれはそれで嬉しいが、送ってくれなくてもはねつけられても、そのときに冷たい眼で見下すひとも 罵倒するひともいない。こうした手軽で安易なネット上の金儲けが、時として犯罪にもつながるということに気づかない若者もいる。顔と名前を持たなくてもい い世界ではあるが、それが見られなければ何をやってもいい、という良識の不在に繋がるのは悲しい。

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になってもまだほのかに暑さがただよっていたので、フライパンをガンガン駆使するのは気が進まない。よって、わたしの好きな「オーブンにぶちこんで、勝手 に出来上がってくれる料理」が登場する。今晩は、豚フィレ肉にニンニクと自家製ローズマリソルトをすりこみ、軽くオリーブオイルをスプレーしたカリフラ ワー、ジャガイモ、セロリと一緒に40分ほどオーブンへ。仕上げに、酸味の濃いサンドライトマトのオリーブ漬けを細かくきざんで添える。さらりとしたフィ レ肉もこれでぐっと味に深みが出るのだ。

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