バンコクに帰るたびに作る定番は「オーブン料理」だ。
あれ?いつもそうじゃん、と気づいた方、そのとおり。わたしは、めんどくさいのがあまり好きじゃないので、時間がないときほどオーブン料理になってしまう。
今日は歯医者に行かなければならなくて、思いのほか時間がかかってしまったために、急遽デンタルホスピタルの向かいのスーパーで手当たり次第買い求め、帰宅してからはアペリティフ。忙しかったわけではないのだけれど、何しろ渋滞にブチ当たってしまったために、その後の予定が大幅に狂ってしまった。
「さて、晩ゴハン」と思って時計を見たらすでに7時半。
こんな遅くに晩ゴハンを作り始めていいのかという常識が頭をかすめたが、スペインに行ったらレストランなんか9時過ぎなきゃあ開いていない。それを考えたらまだ早いではないか。バルセローナに行ったときなんぞ、デザートに行き着いたらすでに午前1時。ほとんど半分しか開いていない目でモウロウとしながらデザートを口に運んだが、味さえ覚えていない。ホテルの朝食が11時半までとれるというのも、スペインならではだと思う。
さて、そんなことを考えながら今晩の食事。
1.5キロもある豚肉のロースト用カタマリを買ったのはいつものことなので、まずマリネを作る。ギリシア風ヨーグルトはこってりとしていてこういう料理によく合うのだが、まず必要なのはプレーンヨーグルト。大盛り大さじ5ほど。そこに入れるのはいつものように、様々なハーブ(今回はディジョンマスタードとオリーブオイルに、ローズマリー、マジョラン、パプリカ、クーミン、ニンニク、ショウガ)を放り込んで、モルターでガンガンと叩き潰す。それを肉に塗ったくって1時間。さらに塩コショウして、190度のオーブンに放り込み、時間がないので「風ブンブン」にして45分ほど。温度計を差し込んであるので、それが60度になったらオーブンから出し、アルミホイルにくるんで15分。
その間に、ジャガイモを剥き、新鮮なローズマリーを刻み、オリーブオイルと塩コショウで和えて、肉を取り出したオーブンへ。やはり「風ブンブン」にしてあるので15分。
その間にささっとハーブとバージンオリーブオイルと赤ワイン酢を混ぜて、いつものドレッシング。
いや、恥ずかしいぐらいシンプルなんだが、これがバンコクの定番晩ゴハン。ローストは簡単だが、時間だけきちんと守っておけばこんなふうにジューシィな肉汁さえあふれる。そして肝心なのはオーブンから出したら、ホイルでくるんで寝かせること。これをしないと、実は肉が固くなる。肉をオーブンから出しても中ではまだ熱が上がっているというのが、理由。
オーストラリアから持ってきたシラーズは調理を始めたときに開いているので、わたしはすでにほろ酔い気分。そのまま飲み続けながら、楽しいおしゃべりといつもの晩ゴハンでバンコクの夜が更けてゆく。