わたしが子供のころ、母は時々マトンを使って「ジンギスカン鍋」と呼ぶマカ不思議な肉鍋を作っていた。味付けは、すき焼きと同じだったと思う。薄切りのマトンとネギや大根などの野菜を甘辛く煮た鍋だ。
妹は「あのなんとも言えない匂いのせいで、羊肉がキライになった」と言うが、わたしはあの独特の臭みもちょっと弾力のある肉も喜んで食べていたと記憶している。
実は羊の肉にも色々あって、6ヶ月ぐらいの羊はラム(Lamb)、1歳から2歳までの羊はハゲット(Hogget)、そして2歳以上の羊肉はマトン(Mutton)と呼ばれる。もっと詳しい分け方もあるが、わたしは食べるのが好きなだけで肉屋さんではないので、このぐらい知っていれば充分だと思う。
今日買ってきたのはそのハゲットだ。生肉の色はラムより赤味が濃い。オーストラリアでは、脂身が多くどちらかというと味が薄いラムより、もう少ししっかりとした肉で羊の独特の甘みと匂いが増したハゲットのほうを好むひとも多い。
オリーブオイルをふりかけてから、ニンニク、オレガノ、ローズマリー、塩コショウでしっかりと味付けをして庭のバーベキューで焼いた。ついでにレモンも焼いておくと、絞るときにもっとジューシーになる。
その間にキッチンのオーブンでは今が季節のベビーズッキーニ、ボタンズッキーニ、そして大きなフィールドマッシュルームをローストした。
実は、学校でちょっと嫌なことがあった。いつものことながら、そうした「嫌なこと」は生徒たちからではなく、同僚や父兄からがほとんどだ。子供たちはどんなにできなくてもワガママでも理不尽なことは決して言わない。自分たちが「親が期待するようにはできない」のをセンセイのせいにはしない。わたしが「どうしてもわからなかったら、個人的に補習をしてあげるからメールを送りなさい」と再三言ってあるからだ。そして、やればほんの少しでもわかるようになるのに、それでもやらないのは勉強がめんどくさくってFacebookのほうが面白いからにすぎない。親にはそれがわからないらしい。
ま、いいや。そんなわけで肉でも食べて元気になろう、と。
いや、全然なっていないような気もするが、床でかまってもらおうとウロウロしている猫たちがかわいくって、結局ワインを飲みながら猫じゃらしを手に取る。