悪い予感というものは意外と当たるものだ。
たぶん混んでいるだろうなあと思いながら出かけたガイジン御用達スーパーマーケットは、案の定午前8時の池袋駅のような喧騒だった。クリスマスの買い出しに、バンコク在住の西洋人たちが皆このスーパーに集まるのではないかと思うほどの込みようだ。大きなハムも七面鳥もすでに焼き上がり、番号札をつけて注文客の到着を待っている。ローストチキン用の鶏はというと…まさかの売り切れ。カットした胸肉だのもも肉だのはあるのだが、肝心の丸焼き用のものが1匹もない。
まだ住んでいたころはよくクリスマスに7−8キロの大きな七面鳥を焼いて10人ほど招いてパーティーをしたものだ。クリスマスのレストランにはもう10年以上行ったことがない。大晦日も同じようなものだが、バンコクではいわゆる「クリスマス・ディナー」と銘打ってコース料理を供するレストランが多く、どのレストランも予約客で満席、たとえ予約がとれたとしても、喧騒と酔っぱらいのせいでよほどの高級レストランに行かないかぎり、とてもゆっくりと愉しめるディナーにはならない。
だから、家でゆっくり詰め物をしたローストチキンでもと思っていたのだが、同じように考えたひとたちが多かったらしい。予定がはずれた。
結局、フィレ・ミニヨンと呼ばれる、牛ヒレ肉のステーキを買って帰った。
ヒレ肉は焼き方が多少悪くてもあまり硬くならず、初心者にも比較的うまく焼けるステーキだ。脂身も少なく、わたしは霜降りのものよりこのほうがいい。ただし、わたしの好みはミディアムレアと呼ばれる「火は通っているけれど、中はバラ色で真ん中にナマの筋が一本はいるくらいのレア」だ。これはもう長年のカンなので、自分用に失敗したことはほとんどない。
今日買ってきたのはベーコンを巻いてあるもので、これだと肉が焼け過ぎることもなくベーコンの脂で囲まれてちょうどしっとりと焼きあがる。
付け合せは、ブイヨンで茹でたブロッコリーとカリフラワー、そしてオーブンで焼いたローズマリーポテトと半分に割ったにんにくだ。こうやってローストしたにんにくはほっこりと柔らかく、肉に加えて食べるととても美味しい。
前菜は簡単にスモークサーモンで。
これだけ食べるとお腹がパンパンになってしまうが、まあ一応「縁起物」なのでケーキも買ってきた。スイスロールに生クリームをつけて、ビュッシュドノエルに見立てた小さなケーキだ。日系のパン屋で購入したので甘みはほんのりで、さっぱりとしている。
本場フランスのBûche de Noëlだとこうはいかない。クリームはこの3倍ぐらい使うし、甘みも強い。それはそれで美味しいのだけれど、こういうこってりしたディナーの後は、和風の甘味を抑えたケーキのほうが胃にも優しい。
食後のキルシュ酒を飲みながらテラスに出てみたら、意外に涼しい。温度計を見たら26度だ。例年より暑い12月だが、それでも夜になるとしのぎやすい季節になってきた。
あと1週間で2013年。メリー・クリスマス!