今日こそ日が落ちないうちに帰るぞ、と固く心に誓っていた。だから急いでデスクを片づけ、今日中に書かなければならないメールを3つほど目にもとまらぬ速さで書き上げ、ラプトップをバッグに放り込み、窓とドアから誰も見えないのを見計らってばばっと洋服を脱ぎ捨て、ジム用上下に着替え、ジムシューズを履いて、オフィスを飛び出した。時刻は四時半。
ジムはうちの近くで車でたっぷり35分かかる。先月またもスピード違反の罰金を払ってからは、もうどんなにびゅんびゅん追い抜かれようときちんと制限速度を守っているからだ。
結局一汗流してうちに着いたときには六時を回っていた。夜になっても28度から下がらない西向きの部屋では、とてもがんがんと火を使う気にはなれない。
よし、鶏肉を焼くだけでできるちょいと温かいサラダだ。
まず、オリーブオイルをたっぷりボウルにいれて、つぶしたニンニクとレモンの皮一個分をがりがりと削って加える。そこにクーミンと塩コショウ。全て混ぜ合わせてから、鶏の骨ナシ皮ナシもも肉をマリネ。その間にサラダを作る。チェリートマト、キュウリ、玉ねぎのスライスに、たっぷりとミントとイタリアンパセリをさっと刻んだ。もちろんハーブは庭からむしりとってきたものだ。
すでに温まっていたグリルで、もも肉をじっくりと焼いていると、隣では湯をわかしてさっと加えたクスクスがすでに出来上がっている。これをサラダボウルに放り込んでドレッシングを作る。プレーンヨーグルトにクーミンと蜂蜜を加え、よく混ぜて塩コショウしただけのシンプルなものにした。
焼きあがったもも肉をざっと切って、サラダの上にちょんと置く。
ヨーグルトドレッシングをかけてしまうと下に何があるのかわからなくなってしまうので、取りあえず写真だけを撮って最後にたっぷりドレッシングをかけた。
さっぱりとしていてエキゾチックなサラダだが、暑くなってきたパースの夜にとてもよく似合う一品となった。