昨日、ベトナムで契約仕事をしている友達が、二週間の休みでパースに帰ってきた。食事前の飲み物でもパブで、ということだったが、ついでに食事もしちゃえと思い全員招待する。総勢四人だ。このくらいの人数だったら、ローストに決まっている。
ローズマリ、ニンニク、タイム、オリーブオイルのマリネで昼間っから寝かせておいた子羊肉は、ラック・オブ・ラムと呼ばれるラムチョップを切らずにそのまま固まりで売っているものを使った。ラム肉は焼きすぎると固くなってしまって、美味しくない。しかし、今回はちょうどいい具合に、外パリパリ中バラ色に焼けて、肉汁もほどよくしっとりと柔らかい。一人分は骨三つから四つぐらいだが、こういう骨付きで焼いた肉は、ある程度ナイフとフォークで食べたら、あとはもう指を使って豪快にしゃぶりつくす。
付け合わせは、子羊肉と一緒に焼いた玉ねぎとジャガイモ、そしてゆでたカリフラワーだ。
「ここ三ヵ月間、ラムなんて食べたことなかったなあ」と笑う彼は、出張先であるベトナムの都市を決してホーチミンシティとは呼ばない。もう二十年もベトナムで土木関係の指導をしているというのに、彼にとってそこは今だに「サイゴン」らしい。
一度理由を聞いたことがあるのだが、彼は微笑んだだけで教えてはくれなかった。