がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

エイプリルフールを競うセンセイと生徒

今年もやってきたエイプリルフール。女学校の生徒たちだって「公認」でイタズラできるとなったら、しないわけがない。
去年は、九年生(日本の中学二年生)のクラスでやられた。

教室の中には、細い釣り糸を通すためのフックが天井にいくつかある。クリスマス前には日本語で書いた年賀状やカードなどをつるしたり、七夕になったら短冊などの飾りもつるす。天井に釣り糸を張ると、ひらひらとしたものを飾るのに便利なのだ。

4月1日に教室でホワイトボードに何かを書いていたら、頭に何かがふわっと当たる。
蝿かなと思って手で払い、また書く。またふわっと何かが頭に触る。また払いのけて、書く。そのことが何度かあって、「やだなあ、蝿かよ」と思っていたら、子供達がくすくすと笑いをかみ殺し始めた。そして、とうとうたまらなくなったのか、イタズラの仕掛け人が「わはは」と大声で笑いだしたのだった。

つまり、ホワイトボードの上にもあるフックを使って、細く黒い糸を通し、その先に小さな紙玉をくくりつけてあったのだ。フックを使ってイチバン前にいた生徒が、わたしが背中を見せてなにかを書くたびに、糸をゆるめてその紙玉がわたしの頭にふわりと当たるようにしていたらしい。わたしが振り向くたびに、さっと糸を引いて天井に紙玉を上がらせていたから、わたしは全く気がつかなかったのだ。
九年生ぐらいだと、もう笑い出したら止まらない。わたしも仕方なく苦笑いしてしまったが、「センセイがやられた」話はすぐ学校中に広まった。

今年は、その九年生たちが十年生になっている。
またやられるかなあ、と思っていたら案の定だ。

語学オフィスは日本語教室の隣にあるから、時々ものを取りに戻ることがある。今日それをやって教室に戻ってみると、20人いる生徒たちの席が全く入れ替わっている。一番後ろにいた子が前にいるし、前に座っていた子が窓際になっているじゃないか。「あれ」と思ったが、そのまま授業を続けた。
そして、生徒のひとりが「センセイ、xxxがもう一枚ほしいんですけど」と言ったので、またオフィスに取りに行く。そして教室に戻ると、今度もまた生徒たちの席が完全に入れ替わっている。「なんで帰ってくるたびに、みんな違うとこに座っているのよー」と言っても、「え、そんなことありませんよ。さっきから、わたしたちみーんな同じところに座ってますけど」とすまして答える。
三度目にまたみんなそっくり席が入れ替わっていたのを見て、「やられた」と思った。「エイプリルフールでしょっ」と言ったら、すまし顔を続けることもできなくなり皆どっと笑い出した。

しかし、今年は違う。「センセイだってやるぞ」と固く心に誓っていた。

そして、10分ほどたった時、わたしは「あ、忘れていたけど」と今思い出したように、マジメに言った。
「来週の読み書きテストね、キャンセルになったって知ってるよね?」
「ええっ」
「あれ、だって昨日の朝礼のとき***先生から連絡があったでしょう。先週、校長先生との話し合いで決まったの。だって、来週は休み前の最後の週だし」
「ええっ、ほんとーーーーっ」
「うそだよ」と、わたし。

センセイを甘くみるとこういうふうにやられるのだよ、キミたち。ふっふっふ。

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