昨日、「子羊肉の美味しいところをステーキにしてちょうだい」と頼んだのに、肉屋の新しいオニイチャンが冷蔵室から切ってきてくれたのは、どうも安すぎた。わたしも隣の友人と話していたので、ろくに見もせずに金を払い、うちに帰ってきて驚いた。
こりゃあランプと呼ばれるお尻のすぐ下の部分だ。どうも脂身が多すぎるし、筋も入っている。どうりで、安いわけだ。
わたしはどちらかというと、あまり脂身のない柔らかい肉が好きなんだけれど、オーストラリア人はどっしりと脂身が入っていて、じーっくりとミディアムどころかウェルダンに焼いても、まだ噛み切れるくらいのものが好きだ。仔羊の肉は脂身のところがちょいと独特の臭みがあるんだよね。うーん、どうしようかなと迷ったけれど、仕方がない、ソースとマリネでごまかすことにした。
わたしは、レモンがとんでもなく安い時、または友達が自分のうちの庭でどっさりとれたレモンを分けてくれた時に、大瓶にぎしぎしと詰めて作る。塩漬けにしたレモンは風味が増して、魚や肉の料理に凝縮された爽やかさをもたらしてくれるので、重宝しているのだ。ギリシャ料理には、特にこのレモンを使った料理が多い。
塩漬けレモンと言っても、使うのはしんなりとした皮だけだ。この皮をざく切りにして、御影石のモルターに放り込む。次は庭からむしってきたパセリ、これもざく切り。オリーブオイルをたらりとたらして、ペストルを握り締め、親の仇のようにがんがんと叩き潰す。塩コショウを加え、さらにがんがん。これを肉に塗りたくって、冷蔵庫で1−2時間ほどマリネにした。こんな下ごしらえをしなきゃあならないのも、安いラム肉のせいなんだ。
鉄製のフライパンをどっこらしょとおろし、オリーブオイルを薄くひいてステーキを軽く焼く。焦げ目が美味しそうについたところで、加減をみながらまだ真ん中が赤いぐらいのところで火からおろす。あとはアルミホイルに包んで五分寝かせれば出来上がりだ。
その間にサルサ・ヴェルデを作る。緑のソースという意味だが、今回はマリネの塩漬けレモンの味が濃いと思うので、チリを使わないイタリア風のサルサ・ヴェルデだ。
オリーブオイル、ニンニク、パセリ、バジル、そして大量のミントを全てモルターに放り込み、がんがんと叩き潰す。いい色になったところで、わたしのストレスも解消するというものだ。普通はミキサーを使えば簡単に出来るのだろうけれど、ハーブだけは叩き潰したほうが香りがいい。
そろそろアスパラガスの季節が戻ってきたようで、西オーストラリア産の太くて美味しそうなものがものがマーケットに並んでいたので、今日はそれもオーブンでローストにした。
食べやすいようにちょんちょんと切ったステーキにサルサ・ヴェルデをたっぷりたらし、歯ごたえのあるアスパラガスをほおばる。ちょいと手間をかけたら、安い肉もかなり満足できる味に仕上がった。