公立高校というところは、アタマのいい子たちが集まっていると言われる学校でも、ドラッグの販売なんかして停学くらったり、タバコや酒で補導されたり、何だか不気味な素行の子供達がいる。地域で入学先が決まるのだから、様々な子供たちがいて当たり前だ。
校庭を我が物顔にのっしのっしと歩く、そんなコワモテの男の子(まず高校生に見えないが、近づくと顔がつるつるなので十代だとわかる)には、必ず化粧バッチリの女の子がくっついていて、まるで「マフィアとその情婦」の縮小版のようだ。
そういうヤツラと毎日顔を合わせて鍛えられている公立高校の子供たちは、人前であまり泣かない。びーびーとオオヤケに泣いたら、何人かには慰められもしようが、冷やかす連中だっているのがわかっているからかもしれない。
私立の女子高は、そんな公立と比べると、かなり大切に保護されている「深窓」の環境だ。
そして、お嬢様たちはすぐ泣く。
いや、いじめられたからとかいうわけではない。わたしの教えているのは12歳から17歳までだが、彼女らは「えっ?}と言うような理由でぴーぴーと泣く。
ロッカーの鍵が壊れた。ブレザーをどこかに置き忘れてしまった。日本語の教科書を忘れた。コンピューターのハードディスクがぶっ飛んだときに、大切なメール(もちろん友達からだよ)が消えた。友達がちょっと冷たかった。ナントカ委員に立候補したのに選ばれなかった。友達の友達の友達の金魚が病気になった。お弁当を買うお金がない(いやビンボーなのではなく、単に財布を忘れただけ)。ジュースをスカートにこぼした。テストの成績が悪かった。タイツに穴が開いた。教室で手を挙げたのにセンセイが見なかった。美術の宿題が雨でちょいと濡れた。ボタンがとれた。ネクタイが曲がっていると友達に言われた。帽子をかぶるのを忘れて、センセイに注意された。体育でxxちゃんと一緒のグループになれなかった。
びぇーーーーん。
最上級生のスピーキング試験、一対一のインタビューでも、それが終わってほっとしたのか目がじわっとうるむ子が何人もいる。インタビューの後、こうした方がいいよ、というアドバイスをしただけで指先で涙を拭く。おいおい。何だか、わたしがコワイ先生で苛めているように見えるかもしれないが、決してそんなことはない。公立高校でもフツウにやってきた試験だ。
感受性が豊かな年頃なのだろうが、それにしても多い。そしてあまりにも突然だ。目の前にいる女の子の目がうるうるしてくると、「やべえ」と逃げ出したくなる。そりゃあほんとには逃げないけれど、泣いている子の肩を抱いて優しく慰め励ます、ってのが一週間に必ず何回かあるこのごろ。
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私なんぞは、戦前生まれの父親から、兄と同じように育てられましたので、「人前で取り乱すことは恥」という昔風の日本男児の行動規範が染み付いていて、人前で泣くことは愚か、愚痴もいえません。
気軽に泣ける人は羨ましいですね〜
私は私立の名門進学校(共学)に通いましたが(医師の子弟がとても多かった)、暴力教師に平手打ちされて、「親にも叩かれたことがないのに〜」と泣いたお嬢様は、クラス中の笑いものになりました。
日本社会のほうが涙に厳しいのかも。
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olivaさん、そうですねえ、わたしの時代も結構学校で体罰を受けていた子供たちがいました。今は、それもなくなりましたね。
オーストラリアでは、体罰が発覚したら訴えられちゃいます。わたしの昔の同僚は、机にペンでいたずら書きをしている悪がきを注意し、それでも薄笑いを浮かべながらまだやめなかったそいつのペンを取り上げたら、「暴力だ」と騒ぎ出され、結局謝罪書を書かされました。「悔しくて涙が出たわ」と言っておりましたが、さんざ悪いことをして停学くらうような問題児の両親まで、そのバカタレの尻馬に乗って騒いだそうで、もうお手上げです。
もうひとつは新聞沙汰になりましたが、近くの高校で殴り合いをしている男の子たちに割ってはいった先生が殴られ、とめようとして男の子の首に手がかかった(首をしめているととられた)とかで、過剰行為として問題に。
生徒に刺されたり、殴られたりしても、黙っていなきゃならない、センセイという職業。結構むずかしいもんです。
しかし、時代が違うとはいえ、教師に平手打ちされて、クラスで笑いものにされるというのも、いやスサマジイですね。
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ペンを取り上げたくらいで謝罪書ですか?
それも凄いですね〜
イギリスのパブリックスクールは結構体罰があったらしくて、チャールズ皇太子も鞭で叩かれたそうですね。
私は1969年生まれですが、暴力教師(男)は学校に一人はいて、意外に女生徒に愛されていました。
男生徒も、例え些細な理由で張り倒されても「あいつ、たいした力じゃないな」と鼻で笑ってやり過ごすのが『男』だと思っていたらしく、暴力教師批判はあまり聞かれませんでした。
体罰も、罪刑法定主義的に決まっていて、執行者も決まっているのなら一概に悪いとはいえませんが(イギリス映画「小さな恋のメロディ」では、宿題を忘れた子が放課後に校長室に出向き、尻を打たれていた)、教師の感情の赴くままに、それも顔を殴られるのは溜まりません。
私が生徒だった頃は「生意気な生徒はどんどん殴ってやれ」という親が多かったのですが、そこには「長幼の序を重んじなくなった、気に喰わない若い世代にヤキを入れてやれ」みたいな私怨がこもっているようで不気味でした。日常生活の不満を若者に向けているという感じでしたね。
今時の度の過ぎた生徒贔屓・教師たたきは、攻撃の矛先が変わっただけのような気がします。
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がびさん、お久しぶり。
ぼくのところは子供がいないので最近の日本の学校のことはニュースで知るくらい。自分が小さな頃は先生からはよく叩かれた記憶がある。当時は、親の方も「先生、うちの馬鹿息子をよくぞ叱ってくれました」と翌日には菓子折りもってお礼に行ってましたね。
世の中、変わったものです。
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パースからバンコクへの移動が重なってしまったため、コメントが遅れました。ごめんなさい。
>olivaさん
西洋の体罰にビンタは含まれません。普通は、お尻か手のひらです。だから、体罰という言葉さえ消滅してしまった今、「ささ、手のひら差し出しなさい」という言葉は、何か失敗をしでかしたときに、同僚がジョークめかしてたしなめるのに使われるくらいです。
子供たちも体罰が現在では罪に問われるということを知っているだけに、教師を挑発するような言動、態度をわざと見せ付けるようなこともあります。
わたしは体罰こそもちろんしませんが、うるさい子供たちの机を教科書でたたくくらいのことはします。「センセイ、ギャクタイだー」と叫ぶ子には、「センセイに対する言葉のギャクタイはどうなんだっ。abuseの意味を正確に辞書で調べてから出直してこいっ」
今は、お嬢様学校なのでこういうイサマシイ対決もなくなりました。
>MAOさん
お久しぶりです。
おやまあ、MAOさんのビシバシとやられた口でしたか。現代のオーストラリアでは、子供の言うことを間に受けて、学校に非難の電話をかける親がたくさんいます。何にもしていないのに、センセイが怒って放課後のバツを与えた、と親に告げ口したら、本当に「何もしなかったのか」と疑ってもみないんですねえ。そういう子供に限って、とても天使には見えない顔ツキなんですが。