がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

スキンシップご法度

このところインフルエンザが流行っているようで、わたしの同僚そして生徒たちがバタバタと休んでいる。月曜日にはもうひとりの日本語教師が「週末に風邪ひ いちゃったみたいで」とゴホンゴホン咳をしていたし、今日になったら隣のフランス語教師が鼻をつまらせた涙声で「なんだか熱っぽいから早退します」とのこ と。クラスにも毎日欠席する生徒がいる。たぶんわたしのインフルエンザも学校の中でうつったようだ。小学校のように教師と子供たちがもっとべたーっと寄り 添った場所では、毛ジラミまでうつされることが多いなんて話もあり、油断大敵である。まあ、中学、高校ではスキンシップ自体が禁止されているので、空気感 染の風邪以外はうつされることもあまりないように思われる。

そう言えば、大学にいたときには、教育実習に行く前に「教育実習前の心得」な どというちょっと笑っちゃうような講習もあった。「女性の実習生は、パンツの見えるほど短いスカートをはかないこと」「胸の谷間を見せたり、透ける上着は 避けること」「耳たぶのピアスは一個にとどめ、その他の場所、たとえば舌、鼻、唇、眉などのピアスははずすこと」「襟足より長い頭髪の男性実習生は、ゴム でとめること」「Tシャツを着ない」「刺青をしているひとは長袖で隠すこと」「ビーチサンダルも裸足もダメ」などと、日本の実習生だったら常識でわかって いるだろうことが、コト細かく説明されたからだ。しかし、驚いたこともある。スキンシップが禁止されているのだ。殴るなんてことは、もちろんもっての他だ が、その上「よくやったねえ」などと、肩を抱いたりポンと肩をたたいてもいけないのだ。行き過ぎの愛情表現として、セクハラの対象となる。わたしの去年の 同僚などは、どうしても机のいたずら書きをやめない子のペンをとりあげたら、その取り上げ方が乱暴すぎたとして、子供の両親からほとんど訴えられそうにな り、そのアホガキに謝罪せざるをえなくなった。「悔しいわよぅ。その子供なんかもうゴーマンになっちゃって、わたしがそれからはちょっと怒ってもセセラ笑 うだけよ。どっちが虐待されてんのよ、ほんとっ。」とほとんど涙を浮かべていた。行き過ぎも問題だ。
だが、この学生と教師の関係は、法律によって 公のものに定められていて、たとえ大学であろうとも教師が学生と学校以外での関係を持つと、教師のほうが罰せられる。利害関係が生じる恐れ、とでもいうの かもしれない。だから、日本のように教授がセクハラだの学生を愛人にするだのというスキャンダルは、皆無である。
しかし、高校の生徒が教師を殴って罰せられるなんて法律も、もちろん皆無である。だから、荒れた高校には、そういう事件を未然に防ぐため警官常駐、なんて物騒なところもあるのだ。やれやれ。

写 真は、5枚つづりになっている「授業に支障をきたすほど素行の悪い子供或いは全く授業に無関心、不参加の子供」に関する公式レポート用フォーム。要するに これを書かれると、コトの如何によっては停学も可能である。訴えられないために両親から教育委員会までのコピー1式が含まれる。

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