またひとつ年をとる日がやってきたので、取って置きのワインを携えて、現地スイス人の間で好評のスイスレストランに行ってきた。顔見知りであるため隅の目 立たないテーブルを用意してもらえたが、ほとんど満席である。それもスイスドイツ語を話すひとたちばかりだ。わたしとパートナーの話す言葉もスイスドイツ 語なので、話に気をつけないと隣にどんなひとが聞き耳をたてているかもわからない。バンコクで和食の居酒屋に行く日本人も同じように気を使っているのかも しれない、と思ったら少々可笑しくなった。
ここでは、スイスと同じ味付けの料理が輸入された野菜と肉で味わえる。値段もそれなりにハネ上 がるが、バンコクのスイス料理ではここの右に出る場所はない。ベーコンと卵を添えたマーシュサラダを前菜に、スイス名物仔牛肉のクリームソースとじゃがい ものローシュティを注文。こういうものを口にすると、ああもう3年も帰ってないんだなあ、と「デラシネのため息」が出る。
デザートのアイスクリー ムが終わると、いつものようにシュナップスとエスプレッソだ。40度もある強いスピリットだが、果物から作られる酒はとてもよい香りで、鼻をくすぐる。わ たしはアプリコティン(アンズのシュナップス)、パートナーはウィリアムス(洋ナシのシュナップス)で乾杯。
外に出ればまだ30度の熱気が夜の空気を満たしているが、隣のスイスドイツ語の会話を聞きながらスイス料理と酒を楽しんでいると、一体わたしはどこにいるのだろうと不思議な気持ちになる。明日は、シンガポール経由でオーストラリアに戻るというのに。。