がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

何もしない贅沢

土曜日の夜は接待がはいっていたのだが、突然朝になってキャンセルの電話がはいった。「パタヤ行こうか」とのパートナーの言葉に、1時間後にはすでに車で高速を南下。こんな休暇らしい休暇は久しぶりである。

タ イの日本人観光客は、ビーチのリゾートホテルに滞在していても忙しい。海岸で籠をかついでやってくる物売りから土産物を買ったり、ボートを借りたり、1日 ツアーを予約したり、夜ともなれば、繁華街でふくらんだ財布を見せつけながら、目当ての女性やら工芸品やらを買う。それはそれで楽しいのだろうが、普段も 忙しいだろうになんでリゾートに来てまで、と思うのはわたしがすでに半分日本人ではないからかもしれない。
パタヤでわたしが行くのは、滞在型と呼 ばれるリゾートホテルである。繁華街からははずれているが、その分ホテルの中に何でも揃っている。レストランはいくつもあるし、バーにはライブのジャズ歌 手を置き、ちょっと小腹がすいたときのためにパン屋からお菓子屋まであるのだ。昼間はいくつもあるプールサイドで、いつもは読めない分厚いミステリなどか かえて冷えたビールを飲み、たまにはプールに飛び込んでドザエモンのように浮かぶ。愛想のいいサービススタッフが巡回しているから、ちょっと指と目で合図 するだけでタオルからマッサージのオバサンまで運んできてくれる。

あまりにも短時間に出かける用意をしたため、ビーチサイドに行くのに水着を忘れ、デジカメもテーブルに置いたまま出てきてしまった。コンピュータはもちろん持たず、携帯電話も切ってしまう。こんな風にただぼんやりと過ぎていく時間に身をまかせるのは、何年ぶりだろう。

「何もしないこと」は、普段の忙しさを忘れる実に贅沢な楽しみである。

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