がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

西豪州で終身雇用教師になる方法

西オーストラリアは大きい。日本の国土の7倍、そしてオーストラリアのほとんど半分近い州面積を持つ。しかし、大都市と賑やかな観光地が密集する東海岸と 違い、一番大きな都市、州都パースでさえ人口は140万人ほどである。従って、広大な砂漠地帯、そして鉱山を持つ小さな村々は、万年教師不足に悩まされる 地域でもある。

そして、西豪教育省が出した苦肉の策は「終身雇用教師制度」という奇妙なもの。パースなどの都市部でも取得できるが、非常 に難しい。なにしろ、「同じ公立高校で3年間」30%以上のパートタイムで持続して仕事があれば「仮終身雇用教師」となり、それから2年間じっと待たなけ ればならない。3年間持続というのが、なにしろ不可能に近い。終身雇用教師は優先権があるので、パートタイムの仕事だろうがなんだろうが、自分の仕事先が ないときは、教育省を通して非常勤教師のその30%の仕事をもぎとってしまうこともできるからだ。そしてもちろん終身雇用である。特別な理由がない限り学 校から肩をたたかれることもないから、居心地がよければ定年まで同じ学校で働ける。
知り合いの仏語非常勤教師はそうして転々と公立校を渡り歩き、 ついに12年目にしてようやく仮終身雇用教師になることができた。また、ある終身雇用教師が「家庭と仕事の両立」という理由で60%のパートタイムの仕事 を要求したため、ちょうど彼女の要求に合う仕事についていたわたしは、今年1月からの契約を去年12月にキャンセルされた。

しかし都市に しがみつかないなら、もっとテットリバヤイ方法もあるのだ。いわゆる砂漠地帯、過疎地に派遣される教師たちに与えられる特権を利用することである。過疎地 の教師不足を解消するための、3年以上そうした地域で仕事をすればすぐに「終身教師」となってパースに戻れますよ、という甘いオサソイだ。生易しい仕事で はないが「石の上にも3年」である。もっとスバラシイ仕事もある。「モバイル教師」だ。これは、四輪駆動で過疎地の村を回る巡回教師である。学校を作るこ とさえできない小さな村を次々と回り、子供たちに必修科目を教える。週に1回このまるでインディージョーンズかクロコダイルダンディー風の「センセイ」に 教えてもらう以外、こういった子供たちはもっぱらインターネット利用の遠隔指導を受けるしかない。

これまた別の知り合いはその過疎地教師 として、3年間パースから車で8時間という鉄鋼採掘の町で歴史教師として働いていた。行く前に、四輪駆動「バス」の免許を取らされたという。子供たちを遠 足に連れていくために、である。住むのは採掘人たちの独身寮だ。「ええっヒドイね」と言ったら、「いや、このほうがかえって安全なのよ。レイプの被害にあ うこともないから」と彼女はいとも簡単に答えた。もちろん荒くれオトコたちの町だから、女性の遊ぶ場所なんぞ皆無である。3ヶ月に1度パースに帰るのだけ が楽しみだったわ、と懐かしそうに語ったが、こりゃだめだ。わたしにはできない。

早々に大学院に戻ることも考えたが、もう少し「教えること」を楽しみたい。かくして現状に甘んじる非常勤教師のわたしは、今年末までのフルタイム契約で、来年契約更新のめどはもちろん立っていない。
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生鮭の切り身が冷凍してあったのでそれを解凍して、クリームパスタを作る。しかし、どうも毎日炭水化物が多すぎるような気がしないでもない。

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