がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

シェントンパークの Kiri Japanese Restaurant

パースに住み始めたときの最初のアパートは、Shenton Parkという西オーストラリア大学に近い静かな住宅街にあった。そのころまだ車を運転していなかったので(いや、免許はあったがいわゆるペーパードライバーというやつで)、大学院の真ん前までバスで5分という立地と隣にあるスーパーのせいで即決したアパートだった。寝室がふたつ、そしてリビング・ダイニング・キッチンがオープンになっていて、ものすごく古いだけに家賃はとても安かったのを覚えている。そして同じアパート内の同じ間取りが、その当時約900万円ほどで売りに出されていた。ああ、買っておけばよかったなあ。パースの物価高騰にともなって今じゃ3倍から5倍になってしまった。

わたしが引っ越したあとで、色々な店がそのアパートの周りにできて、今では予約するのも難しいイタリア料理店なども並んでいる。

そして、そのレストランがいくつも並んだ一角にひっそりとKiriがある。
入り口はふたつ。右側はカジュアルな雰囲気のテイクアウト屋さんで、そこで食べることも持ち帰ることもできる。左側の入り口をはいると、こちらは小さいながらも本格的なレストランだ。

今回は友達の紹介で皆で「シェフのおまかせコース」をお願いした。

まず出てきたのが、刺身の前菜。帆立貝の上に海老とキュウリのジュリエンヌ風、そして小さな紫蘇の葉が上にふわりと載せられている。添えられた柚子胡椒をつけて食べてみると美味しい。どこで紫蘇が手に入るんだろうねえ、とひとしきりテーブルで話題に。

次は鴨の冷製。ベビーグリーンが上に載せられていて、その下に口の中でとろけそうな柔らかい鴨に出し汁がかけられている。これにはテーブルで歓声があがった。鴨と言ったらコンフィかね、というパースでこんな繊細な鴨肉の和風だしが食べられるとは思わなかった。小鉢に注いで出し汁も最後の一滴まで美味しく飲んでしまったのは言うまでもない。

刺身盛り合わせは、新鮮で活きのいい魚ばかり。マグロの赤身、サーモン、ハマチ、タコ、そしてちょっと変わっているのが昆布に挟まれたキング・ジョージ・ホワイティング。日本語ではアメギスというキスの一種だそうだが、昆布の歯ざわりと重なってさっぱりと食べられた。

次に来たのが、天ぷら盛り合わせだ。大海老に添えられたのは何とケイルの天ぷら。お隣にはタケノコと紫蘇を白身魚で巻いたものが揚げてあった。ケイルはカリカリにローストしておつまみにすることもできるが、天ぷらにしても美味しいとは考えてもみなかった。海老はもちろんアタマとシッポもかりかりと食べられる。オーストラリア人の仲間がひとりアタマとシッポを残していたので、下げられる前に日本人の友達がさっとさらって食べてしまった。残してしまうにはもったいない。

ナスの揚げびたし。
ナスはやっぱり揚げるのが一番美味しい。油を吸ってとろりとしたところに出し汁をかけて冷たくしてある。

寿司盛り合わせは、今日楽しみにしていたコースのメインのひとつ。マグロ、スナッパー(鯛の一種)そしてウナギ。あとからイクラの軍艦巻も出てきた。 そして、ほっとするような豆腐とわかめの入った味噌汁がついている。

あとはデザートだね、と言っていたら、なんと小豆入りの抹茶ロールケーキが白薔薇に囲まれてテーブルの上へ。ロウソクが1本刺さっている。
えっ。
実は友達が店に頼んで用意してもらったわたしの誕生日(10月8日)の一月遅れのお祝いだった。うわあ…とこれには本当に感激してしまった。嬉しかった。

そして、デザートのきなこ入りのアイスクリームには、先ほどの抹茶ロールケーキが添えられていた。

パースの和食はオーストラリア料理とのフュージョンも多いが、Kiriの料理はオーストラリアの素材を活かした伝統的な和食だ。金曜日の晩は予約も難しいそうだが、早めの時間帯だったわたしたちが座ってから1時間もたたないうちに満席となった。

今回はおまかせコースだったが、次回はアラカルトで注文してみたい。学校からの帰り道でもあるので、テイクアウトでお弁当も買ってみたい。

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