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マチの「入れ歯屋さん」にようこそ

ちょっと用事があって、もう二年ほど行っていなかったチャオプラヤ川近辺、というより王宮の近くを散策する機会があった。

この辺は、かなり整備されたスクムビット界隈と違い、まだ混沌とした狭い通りが縦横に走っている。トゥクトゥクもたくさん走っているし(スクムビットあたりだと、すでにメータータクシーばかりだ)、オレンジ色の法衣を着た僧たちと軽装の外人観光客と近くのタマサート大学の学生たちの混雑がすごい。女性に触れてはいけない小乗仏教の僧たちがゴマンといるものだから、一応女性であるわたしはいちいち避けなければならず、ずいぶんと気を使ってしまう。
で、いきなり目の前に現れたのが、この「入れ歯の露店」だ。
ガラスの割れた粗末なケースには、様々なサイズの歯が放りこまれていて、ちょいと不気味。ペンチやら金槌やら、ぶっそうな道具も並んでいる。
店のあんちゃんは、隣に座ったおじいさんの入れ歯の修理中だ。おじいさんは入れ歯を出しちゃったものだから、口の周りをへこませたままモグモグと動かしている。あんちゃんは、どうやらその入れ歯の合わせをしているらしい。紙やすりで入れ歯をごしごし、がりがり。ためつすがめつしてから、タオルで一応さらっと拭いておじいさんに渡す。口に入れて、もぐもぐ。首をかしげるおじいさんからまた入れ歯を受け取って、ごしごし、がりがり。それが何回も繰り返される。
あまりの光景に感心して、写真を取るのも忘れて見とれてしまった。

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ポークローストのゴルゴンゾーラソース

豚肉のかたまりを買うときは、いつも「このぐらいね」と両手の人差し指を適当に離してサイズを示す。1kgとか2kgとか指定すると、どうもうまい具合に好みのサイズに行かないからだ。そして、そのサイズがどのくらいの重さになるのか、いつも確認するのを忘れる。たぶん1.5kgから2kgの間だと思うのだが、料理をするときの材料と同じで適当だ。

今晩は、オーストラリアから持ってきたゴルゴンゾーラチーズを使ってソースも作ることにした。バターと小麦粉でブールを作り、そこにコンソメを少しずつ入れて煮詰め、あとは生クリームとぽろぽろにくだいたゴルゴンゾーラを加えるだけ。クリーミィになったらおしまい。
一度、ねっとりとしたゴルゴンゾーラ(このほうが高価なんだけど)を使ってダマにしてしまい、紅茶濾しを使ったことがある。チーズのねっとりとした部分はソースに向いていない。脂肪も浮くし、ね。
豚肉は、いつものように塩コショウしてからフライパンで焦げ目をつけ、ローズマリと粒マスタードを塗りたくってオーブンへ。4−50分で中が50度ぐらいになったら、わたしはもうオーブンから出してしまう。あとはアルミホイルにくるんで10分ほど置くだけで、切ると肉汁が出るほど柔らかく出来上がる。
ソースがかなり濃厚なので、ジャガイモは面取りをして茹でただけ。こういう晩御飯は、ワインを開けてゆっくりと楽しむべきだ。うん。

ダイハード4.0(2007)

ダイ・ハードの一作目が世に出たのは、なんと1988年、ほとんど20年前だ。

スーパーマンのように空を飛ぶわけでもなく、007のようにカッコよくもなく、ただひたすら悪態をつきながら満身創痍で走り回るブルース・ウィリスがとても人間くさかった。そして、テンポのよい息もつかせぬアクションに、ポップコーンを食べるのも忘れて見入ってしまった19年前のワタクシ。

その、ブルース・ウィリスが戻ってきた。
カリフォルニア知事になる前のシュワルツネガーだって、ロボットのくせに皺が深くなった20年後のターミネーターをやっちゃったし、来年には65歳のハリソン・フォードがまたもやインディー・ジョーンズになるくらいだ。ブルース・ウィリスが、額の後退を気にせずにすむ坊主頭で戻ってきても、不思議じゃない。

アメリカの都市としての機能を完全に麻痺させるサイバーテロ集団に立ち向かう、アナログ人間ジョン・マクレーン。エレベーターから墜落しそうになったり、カンフー娘に痛めつけられたり、糸をひかなくてもスパイダーマンのような華麗なる動きをする敵を見事にやっつけたり、カーチェイスではF35に攻撃されたり、それでも生き残る男ジョン・マクレーン。F35が真正面からミサイル撃ってきているのにもかかわらず、だ。

コンピューターグラフィックの技術が進んだため、1と2よりはるかに多用されているのがちょいと残念だ。それがマクレーンを、なんだかスーパーマンのように変身させてしまったような気がする。あまりにも規模が大きくなりすぎて、タダの人間じゃあとても脱出不可能の状況は、「ほう」という感嘆とともに「くすり」という笑いをも誘う。

そのマクレーンの相棒になる、コンピューターおたくの男の子。この童顔はどこかで見たぞ、と思ったら、MacのコマーシャルでさんざWindows(役の役者)を馬鹿にするMac役の男の子だ。その前は、ギャラクシー・クエストでやっぱりコンピューターおたく(というよりTVドラマおたく)を演じていた。こういうのも、タイプキャストというのだろうか。クチの達者な少年というイメージで、親しみやすい顔だ。
この二人がコンビを組んで悪のサイバー集団に立ち向かうわけだが、なんで物足りないのかと思ったら、悪役がどうも情けないのだ。サイバー集団というだけあって、「戦える」のは悪ボスの愛人のカンフー娘(こういうのもタイプキャストだなあ)と、糸なしスパイダーマンだけだ。あとは、みんなカチカチとキーボードを叩いているだけ。華麗なる指さばきで、次々と移り変わるWindowと意味なし文字の羅列に目をこらす。現代的と言ってしまえばそれまでなのだけれど、みな頭デッカチで、目をぎらぎらさせる「悪の権化」的インパクトに欠ける。

だから、見ごたえはあくまでもブルース・ウィリスだ。
超人だろうがハゲだろうが、彼は男くささムンムン、まだまだ現役だ。妻には逃げられ、娘には鼻であしらわれ、しかし最後にはみなの賞賛を集めてしまう傷だらけの男は、彼をおいて他にはいない。五十二歳にして自らのアクションだけで主役をはるのは、並大抵のことじゃないのだ。
あと十年たって、定年間近のジョン・マクレーンが「腰の痛さを押して走るところ」をまた見たい。