来週のランチにも重宝するので、チキンを丸ごと買ってきた。わたしのいつも使うのは、「棚で育てられた鶏」ではなく「放し飼いの鶏」だ。冷凍ではないし、餌も吟味されているので嫌なにおいもしない。
これを開いて、いつものようにニンニク、しょうが、香菜、チリを刻んでからフィッシュソースとレモン汁と合わせ、昼間から漬け込んでおく。夜になってから庭のBBQに火をつけ、じゅうじゅうと焼いてからアルミホイルにくるんで落ち着かせること十五分。
その間にサラダを作る。
缶詰のヒヨコ豆、半分に切ったチェリートマト、ラディッシュの薄切り、スライスした赤玉ねぎ、ミントの葉をボウルに混ぜ合わせる。まだ何かないかな、と冷蔵庫をごそごそと探したら、今週食べたそら豆の残りがある。これも、入れちゃおう。
ドレッシングは、プレーンヨーグルト、オリーブオイル、レモン汁全て同量、そこに中近東のスパイス、スマックをぱらぱらとふりかける。スマック(Sumac)は中近東のスパイスだ。スマックの実が赤く熟したときの外側の肉だけを乾燥させ、挽いて粉にするらしい。真紅のパウダーは、レモンのようなきりりとした味がして、わたしはよく肉料理やサラダに使うことが多い。塩コショウしてから、キュウリの角切りをそのヨーグルトドレッシングに加える。そして、出来上がったサラダのの上にグリルドチキンの一切れを置き、その上からドレッシングをたらした。
わたしは亡くなった父に似て、豆類が好きだ。特に、そら豆を食べると父を思い出す。母が茹でたそら豆が父の晩酌に添えられると、あっという間になくなった。それほど好きだった。こちらでは今がそら豆のシーズン、長いさやにはいったそら豆が八百屋で買える。しかし悲しいことに、このデカイさやにはそら豆がいくつも入っていない。スーパーのビニール袋いっぱいに買っても、さやをとって茹でるころにはその量は片手の手のひらに乗るくらいまで減っている。
わたしはもちろんヒヨコ豆も大好きだが、父は残念ながらこれを一度も食べたことがなかった。「今度買ってきてあげるからね」と言っておきながら、忘れっぽい娘はいつも父に「買ってきた?」と聞かれてから思い出した。