がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

たくましい蟻たち@キッチン

わたしのアパートは、修復した大きな19世紀末のモルト工場だ。
工場の昔のままの棟をそのままアパートに改装しているから、天井が高いし建物自体も大きい。しかし、何度も書いたように隣人がうるさいのと、入り口にたどりつくまでの長い階段に、近頃閉口してきている。

正確に言えば3階と4階にあるので、たくさん買い物をしたときなど外階段を上がりきるとぜえはあと息が切れるのだ。エレベーターなどもちろん、ない。
その長い階段をものともせず、夏の初めから蟻がぞろぞろとキッチンにはいりこんできている。米粒ほどのハムが落ちたところがマックロになっていて、虫にはからきし弱いわたしをひえええと叫ばせることが多くなった。
それどころか、ゆきちゃんのごはんボウルの中にまで侵入してくるのだ。彼女は食べ方がバッチイので、ボロボロとドライフードをこぼし、齧っては飛ばし、したがって蟻は大喜びをしているらしい。

仕方がないので、大きめの皿の上に水をはり、その中にごはんボウルを置くようにしたが、「堀」があるにもかかわらず蟻がボウルの中でゴソゴソと動いている。
最近の蟻が泳げるとは知らなかった。
と思ったら先週あたりから、ゆきちゃんの猫ミルクボウルの中で、ミルクの表面のふちにまで蟻がずらっと並んでいる。
最近の蟻がミルクを飲むとは知らなかった。
そばで「運の悪い同僚」がミルクの中で溺死しているというのに、たくましいヤツラである。

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