がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

勝手だよなあ

ほとんど授業にならないくらい生徒が少ない。学期末最後の週ということもあり、早々に家族で休暇に出かけてしまうらしい。出かけてしまうのはかまわないの だが、学期末はどこの学校でも期末試験というものがある。それを早めにしてくれだの、ウチの子供だけは来月にさせてあげてくれだの、来学期になってから遅 れないようにプリントか練習問題を早めにくれだの、「おいおい、ちょっと待てよ、アンタの子供以外に一体何人担当してると思ってるんだ」と言いたくなる。 わたしゃ家庭教師じゃないんだよ、と呟きたくもなる。そりゃあ子供の教育に関心があるのは結構だが、それならそんなヘンテコな時期に勝手に休暇に行くな、 と言いたい。そういう子供の練習問題なんぞ作っている暇があったら、膀胱炎になる前に一日一回はせめてトイレに行きたい。ランチのサンドイッチを右手で食 べながら、左手で採点をするなんてことをやめて、ゆっくり食べたい。

教師になってわかったことだが、ビジネスをやっていたときよりも時間 の拘束がはるかに厳しい。オフィスにいれば、私用電話をとることもできる。ちょっと珈琲をすすりながら仕事をすることもできる。まさかトイレに行けないほ ど1分2分を争う仕事というのは、あまりない。しかし授業というのは待ってくれないのだ。子供を置いて、トイレに行くために教室をあとにすることはできな い。教室の隣の語学教師オフィスで、電話がじゃんじゃん鳴っていてもとることなんかできない。授業中なのだ。
それなのに、昨日など15分鳴りっぱ なし。子供たちが「センセイ、うるさいから出たらー」と言うので、ドアを開けっ放しにしておいて出ると、「xx先生はいますか?」とのんきな声。「今、彼 女もわたしも授業中です。」「何時にならオフィスにいますか?」「彼女の時間割は知らないのでわかりません。」「調べることはできますかあ?」「あの、今 わたしも授業中なのですが。」「じゃあ伝言だけお願いしまあす。」「名前と電話番号だけにしてください。あとから彼女が暇なときにかけなおさせるようにメ モを書いておきます。」「それじゃあ困るんです。わたしの娘のフランス語のことなんですが。。。」「わたしは日本語教師で、たった今授業中なんですっ。 28人の生徒が後ろで待っているんですっ。」「はあ、、、、」
学校の交換手が普通は出てくれるのだが、席をはずしていたらしい。しかし、アンタの 電話に出ているのはたった今授業中の教師だと言っているのに、事情を想像することのできないひともいるのだ。自分のことしか考えていない。実際のところ、 わたしがちょっとでも席をはずしている間に教室で何らかの事故が起こった場合、わたしの責任が問われるのだ。ああ、ハラがたつ。

と言うわ けで、そういうときは料理をする。今晩は、刺身にしてもいいマグロの赤身をショウガ、みりん、酒、しょう油、砂糖少々に漬けておき、それを両面さっと焼い た。タタキのようなものである。中華カラシ菜炒めを添えて出来上がり。こういうものを炊きたてご飯でゆっくり楽しんでいると、眉間のシワシワもゆるんでく る。

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