豪州では牛肉がとんでもなく安い。高級肉屋に行っても、100g200円以上の肉に出くわすことはまずない。そして徹底した動植物類の輸入制限により、悪 名高い狂牛病の汚染という被害もないから、安心して食べられる。アジアのほとんどの国では今オージービーフがもてはやされているが、最近では日本への輸出 用に、霜降り牛肉も開発されているらしい。
しかし、霜降りなんてオージーたちが知らないことからもわかるように、この国の牛肉は確かに歯ごたえが ある。そしてその歯ごたえのある肉を4cmくらいの厚切りにして、裏庭のバーベキューなんぞでジュウジュウとしっかり焼くものだから、運が悪けりゃ歯を痛 めるくらいの固いステーキにぶち当たる。こちらのひとはほとんど、中まで火の通ったウェルダンがお好みなのだ。
だからレストランなどでたまにス テーキ類を注文するときには、わたしは「いやーなウルサイ客」に変身する。「あのですね、わたしはミディアムレアがいいんですが、それってミディアムでも レアでもなく、表面はちゃんと美味しそうな焦げ目がついていて、中半分くらいはきれいなピンク色、そしてマンナカにうっすらと赤が残っているくらいにして ください。」
しかしこれだけ言っておかないと、ピンク色など影もないしっかり焼かれたステーキや、はたまたほとんど生肉状態のステーキがやってく ることが、かなりある。どんなお好みで、などと一応聞いてくるわりには、実際のステーキの焼き方はオオマカであり、細かく指示する客もいないらしい。
今日の夕食は、サーロインステーキにマッシュルームとシュガースナップピー(この「太った絹サヤ」は日本で別の名前がついているのだが、ああ思い出せない)。ソースは肉汁にサラッとシェリー酒を合わせた。
普段あまり牛肉は食べないのだが、たまにはこんな夕食もいい。自分で焼けば好みの仕上がりに出来るし、ね。