がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

熱心な読書家

わたしの住んでいるアパートは、昔モルツ(ビールの「素」ですね)工場だったところで、1900年代初頭の建物を改造して敷地ごとアパートメントハウスに 改造したうちのひとつだ。長いウナギの寝床のようなレンガ造りの建物が、入り組んで敷地を這っている。街のドマンナカということもあって、中はかなりトレ ンディな作りだ。プールには温水のジャグジがあり、ジムもサウナもそろっている。

去年は全く使わなかったそのジムに、今年にはいってから週に2回は行くようにしている。わたしの使う遅い午前中はほとんど人気がないからだ。
今日も誰もいないだろうと、勢いよくドアを開けたら、いた。30代の男性が本をハンドルに乗せて読みながら、ゆっくりゆっくりフィットネスバイクを漕いでいる。
わたしのスレッドミルとマシンのエクササイズは30分でソソクサと終わったが、彼はまだゆっくりゆっくりと漕いでいる。あのスピードでは、歩いたほうが速いのではと思うくらいの「ゆっくり」だ。
午後にショッピングセンターで買い物を済ませ、帰りにまたジムを通りかかると、今度は大きな泡を噴出しているプールのジャグジに座って、彼はまだ本を読んでいた。
自転車もプールのぶくぶく風呂も、本を読むには絶好の環境ではない。ましてや、わたしが最初に彼を見たときから、ゆうに4時間はたっている。
マコトに不思議なひともいるもんだ、と妙に感心してしまった。

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