がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

自家製ナスのマリネは青空市場で

「また雨かあ。。。」とため息をついていたら、ぽっかりと太陽が顔を覗かせた。パースはこうなるとゲンキンなもので、すぐにほかほかと暖かくなる。それっ とばかりに車を走らせて東へ。わたしの自宅(パースのど真ん中)から15kmほど、そこはもうワインで有名なスワンバレーのふもとだが、今日のお目当ては ワインじゃない。ここら辺はミッドランドと呼ばれる近郊の町だが、日曜日になると青空市場がたつのだ。パース市内や港町フリーマントルの週末マーケットは 大きなホールの中に指定されているのだが、ここの市場はファーマーズマーケットという近郊農家の直接販売である。だから売っているひとたちも家族総出、子 供ももちろんビニール袋片手に声を張り上げる。英語圏出身者だけではなく、ここの市場はアジア系、イタリア系農家も多い。
新鮮な野菜と果物を選ん での帰り、最後から二つ目当たりの店先には大きなビンが何本か並んでいる。見たところ野菜のピクルスのようである。そこにちょこんと立っていたわたしより 頭ふたつほど小さい老人に「これはなんの野菜ですか?」と聞いたら、ほんとに英語かいなと思うほどの、ものすごいイタリア語なまりが返ってきた。
「マリネしたナス。ワイン酢に漬けてから、オリーブオイルに漬ける。冷蔵庫ならふた開けてからでも、1ヶ月は確実に持つな。ただ、チリも入れてあるからちょっと辛いよ。うちでも食べているヤツだ。」
細 切りにしたナスは、ちょっと見た目にはタケノコのようだが、ぎっしりと詰まっていてウマそうだ。こんなピクルスは市内の店では見たことがなかったので、 さっそく買い求めて、帰ってからの遅いランチにする。軽いライスクラッカーの上に乗せてかじってみたら、弾力のあるナスが歯ごたえよく、チリも心地よく舌 を刺す。スーパーなどでもナスのマリネは買えるが、大きく切ったナスが油を含みすぎていて自分で作ったほうが好きだ。が、これはさっぱりとしていて、はる かに安くて美味しい。ワインのつまみにもいいなあ、いや、これならスパゲッティソースにも使えるぞ、と密かにほくそえむ。
これだから、わたしは市場通いがやめられないんだ。

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