がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

十二年生のドレスアップ・ディ2005

すっかり忘れていたが、昨日の朝のホームルームの教室で子供たちに言われて気づいた。今日は十二年生の学校最後の日だ。毎年行われている「ドレスアップ・ディ」の日なのだ。

一応十二年生だとて授業はあるのだが、ほとんど授業らしいことはしていない。他のクラスに行ってはいけない、と言われているだけだ。第一「ドレスアップ・ディ」だから、教室に座っているのはいつもの彼らではない。180cm以上あるデカイ熊のぬいぐるみや、、インディアンのねーちゃんや、ダースベーダーや、スパイダーマンや、ニンジャや、マリリン・モンローや、バットマンたちだ。そう、今日は十二年生たちが思い思いの仮装で学校に来る日なのだ。

朝、わたしが学校に来た時間には、すでに「熊」と「あひる」が立ち話をしていたし、後ろからは「イエス・キリスト」が「相撲力士」と歩いてきた。

わたしが担任のホームルームは八年生から十二年生まで総勢二十八人、そのうち卒業する十二年生は五人だ。最初にやってきたのは、頭になが〜い羽を三本つけたインディアンの酋長の娘で、あまり羽が長いためドアの上にひっかけてカツラがもげそうになった。次にやってきたのは、60年代調の大きな金髪のカツラをかぶったウエイトレスたちが二人、そしてゴリラと映画のオースティン・パワーズの格好をした男の子たちが教室に入ってきた。
オースティン・パワーズというのはアメリカのコメディ映画の主人公で、黒ブチの眼鏡をかけて派手なスーツ姿をしている。ビロードのマッサオなスーツは結構その子に似合っていた。普段あまりふざけているときには、わたしが一喝することの多い子だった。わたしと冗談を言い合うのが大好きだったが、調子に乗りすぎてはまたわたしに怒られる。わたしもかなり頻繁に冗談を言うが、きちんと大事な情報を連絡しているときはおしゃべりは禁止だ。限度と節度を教えているつもりなのに、ヤツは性懲りもなくハメをはずす。しかし、気分の起伏の激しい子で、しゃべりだしたら止まらないときもあれば、黙って誰とも話さないこともある。あまり勉強ができるとは言えないし、遅刻することも多い。

昨日、「明日の高校最後の日は、このホームルームの全員にハグ(軽く抱きしめること)するからなああああ」と宣言して、下級生たちから「げええええ」とブーイングされていた。

今日は無礼講なので、わたしもあまりうるさいことは言わない。さんざ写真を撮りあった後、教室で皆の前に立ったヤツはこう言った。
「このホームルームの全員にハグするのはめんどくさいので、オマエらは省略してセンセイだけにハグすることにする」

ええっと思ったのもつかの間、わたしより頭ふたつぐらい大きいヤツにがばっと抱きしめられ、背骨が折れそうになった。恥ずかしいから、いきなり乱暴にハグしたらしい。
それでも、小さく「センセイ、ありがとーな」と言っている顔を見上げたら、やっぱりマッカになっていた。

 

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