スコットランド風シチューで冬の最後の寒さを乗り切る

わたしもよく知らなかったが、スープとシチューは定義がちょいと違うらしい。
英語では「stewing」という料理用語があって、これは具にスープなどの液体を具が半分隠れるぐらい入れてコトコトと弱火で煮ること。つまり液体のほうが具より少ない。煮物と言ってもいい。スープは肉や野菜などを「スープの中で」煮たもの。つまり具はスープの中に水没していると言ってもいい。

がびんちの今日の晩ゴハンはそのシチューだ。
いいかげんワイルドフラワーまで咲き始めているというのに、パースはまだ寒い。いや昼間はすでに20度以上になるが、朝晩はまだ10度前後だ。だから朝はふわふわのマフラーをグルグル巻きにして出かけ、昼からは長袖ブラウス一枚という姿になる。そして、夜はまた気温が下がるのでストーブにスイッチを入れる。今晩は8度。温かいスープかシチューが食べたくなる気温だ。

さて、そのシチューだが、わたしのお得意の「料理とは言えないほど簡単な料理」のひとつ。

まず、玉ねぎひとつ、ニンジンを皮を剥いて1本、ジャガイモを皮を剥いてひとつ、セロリ1本、全て賽の目(サイノメは適当に角切りってこと)に切り、ポロネギ(ぶっといヨーロッパのネギ、なければ長ネギ)はざく切り、ニンニクはみじん切りにしておく。

野菜のコンソメキューブ(なければ、わたしが今日代用したようにチキンコンソメのキューブ)を大体250mlの計量カップ(オーストラリアは200mlじゃないので)で2杯強の水と一緒に鍋に放りこみ、切った野菜類もすべてブチこみ、煮立たせる。

煮立ったら火を弱火にして、今度は大麦と赤レンズ豆を各々「手のひらに乗るくらいのひとつかみ」加える。…と言っても皆手の大きさが違うだろうから、たった今自分の手のひらに乗せて測ってみたら大体50gと言うところか。ま、そこらへんは臨機応変に。

あとは蓋をしてコトコトと40分ぐらい。野菜が柔らかくなって、大麦と赤レンズ豆が煮えたら、味をみてから塩コショウしてもいい。コンソメに塩味があるので、わたしは加えなかった。

ここに低カロリーのソーセージを一本スライスしてから入れて、また5分。できあがり。

見た目はまあ「ただの野菜とソーセージのシチュー」だが、スコットランドではシチューに大麦を入れるのでスコットランド風。美味しいよ。
大麦とレンズ豆も入っているので、1杯食べれば晩ゴハンとしても充分な量で、しかも低カロリーだ。沢山つくったので、明日のランチもこれ。そして残りは1食分ずつ小分けにして冷凍庫へ直行。

(1枚目の写真ではスプーンが左に置いてあるが、わたしは左利きなのでこれが当然のテーブルセッティングなのだ。お見知りおきを。)

アジのイタリアングリルとスパゲッティ・アレ・ヴォンゴレ

土曜日はもちろんショッピングの日。いや、指輪や洋服や靴を買うわけではなく、冷蔵庫用のモノの買い出しだ。

近所のショッピングセンターの魚屋から丸顔のオジサンが手を振っている。で、手を振り返したら手のひらの振り方が変わって「来い来い」になった。
近づいてみたら、まあなんと「大漁」じゃないか。新鮮な貝殻つきの帆立貝とアサリ。その向かいにはバラマンディー(スズキの一種)の目がキラキラと輝いている。氷を敷き詰めたところには小さめのアジとフリーマントル港に上げられたスルメイカが。
この魚屋は生の新鮮な魚は西オーストラリアで捕れたものが多く、そのほかの魚もオーストラリア産しか扱っていない。冷凍モノは海外からのものもあるが、そのほとんどはオーストラリア産だ。市内のレストランにも卸していて、店主のオジサンは、春節にはドラゴンの中に入って中華レストランを踊りながら回る有名人でもある。ここのシーフード以上のシーフードを売っている店はないくらいで、いつも客で賑わっているのはそのクオリティーのせいだと思う。

目移りがしそうなほど新鮮なモノが多く、取りあえず今日はアサリとアジにした。ほんとは和食でも作ろうかと思ったのだが、こんなものを見たら買う以外なし。今日は、アジのイタリアングリルとスパゲッティ・アレ・ヴォンゴレに決定。

イヤに安いとは思ったが、アジはウロコ取りがしていない。包丁を使ってばりばりとウロコを剥がし、腹にナイフを入れて内臓を取り出しきれいに洗う。オリーブオイル、レモン汁、パプリカ、塩コショウでマリネし、30分ほど置く。

あとは外のバーベキューグリルでじゅうじゅうと焼く。焼いている間は冷えた白ワイン、西オーストラリアのリースリングを飲みながら。焼けたら、レモン汁をまた絞って焼き立てを食べる。うーん、美味い。

お次はスパゲッティーだ。

アサリは30分ほど塩を吐かせてから、ザルの中で待機。ニンニク、パセリの「茎」(このほうが香りが強い)、皮を剥いたトマトのざく切り、チリフレーク、たっぷりのオリーブオイルを強火で炒める。

そして、砂抜きをしたアサリを入れ、250mlのワインをざぶんとかけ、蓋をする。ごめんね…。
貝が開いたら、同時に茹で上がるようにしたスパゲッティを水を切って入れ、ざっと混ぜ合わせる。アサリは塩水で砂抜きをしているので、塩はできあがったスープの味を見てから。

スープが沢山出たので、皿は平たいものではなく深皿を使った。ついでに、朝買っておいたバゲットもちぎっておく。スープに浸して食べたいので。

非常にシンプルな料理で、めんどくさいのは包丁を使うことだけだ。それでも素材が新鮮だと舌鼓を打つほかはない。皿のスープも全部パンで拭き取るぐらい堪能して、今日の晩ゴハンは大成功。

小麦粉を使わないニューイングランド風クラムチャウダー

土曜日の買い出しに行ったら、魚屋のオジサンが手を振って「来い来い」と呼んでいる。また何か新鮮なモノが手に入ったのか。
「見てよ、こんな新鮮で大粒のアサリ!」と指差した先には、砕氷の上に大量のアサリがほんの少し口を開けて山のように盛ってある。なんでも西オーストラリアのシャークベイ産だと言う。パースから海岸沿いに850キロほど北上した場所にある小さな湾岸だ。昔は冷凍モノしか手に入らなかったが、このごろでは新鮮なアサリも時々あり、入ったときには魚屋が手を振ってくれるのだ。

これを海水程度に塩を入れた冷水に漬けて2時間。砂が吐き出されたころにベーコンを刻み、セロリとオニオンをブツ切りにし、バターで炒める。柔らかくなったらアサリを入れて、水を半カップ注ぐ。それから 火を高温にして蓋をし、かわいそうなアサリが昇天するのを待つ。

火からおろしたアサリは、このままだと貝殻が多すぎてチャウダーにできないので貝殻から外し、飾り用に幾つか殻付きで取っておく。

先程野菜を煮た鍋に今度は牛乳を2/3リットルぐらい入れ、ベイリーフとタイム(どちらも自宅の庭からむしってきたもの)とサイコロ状に切ったじゃがいもを加えて柔らかくなるまで煮る。20分くらいか。

普通クラムチャウダーと言うと小麦粉とバターをつかってトロリとさせるが「これだと小麦粉くさくっていけねえ」と教えてくれたひとがいて、わたしも彼女の真似をしてミキサーでトロリとさせてみることにした。
バターとベーコンの脂はもちろんスープの上に浮いていて層になっている。こんな具合に。

そして、これを混ぜ合わせてくれるのが本来の小麦粉の役目だ。が、それなしでミキサーにかけることでこの脂がいい具合に混ざり、しかもふわりとしていて小麦粉のねっとりした舌触りと匂いもない。いいことを教えてもらった。

出来上がった「スープ」の野菜をアサリを入れたザルの上から加えて濾し、下にたまったスープだけをミキサーにかける。スープがふわりとなったらミキサーを止めて具と一緒に鍋に戻し、もう一度軽く温めて塩コショウしてオシマイだ。おっと、そして温めているときにクリームを半カップほど注ぐ。これでコクも増すので。

久しぶりに食べたクラムチャウダーだが、小麦粉を使わなかったため本当に軽い舌触りだ。新鮮なアサリもふっくらとしていて美味しい。今度またアサリが手に入ったら酒蒸しにするか、またはトマト味のマンハッタン風クラムチャウダーにするか。食の愉しみは尽きない。