成田空港の中では、気がつかなかった。税関検査を通過してリムジンバスのチケットを買ったときにも、まだ思ってもみなかった。そして、スーツケースを引きずって外に出たとたん、寒風がいきなり頬を殴りつけた。さ、さむーい。5時だというのに、マックラだ。雨さえチラチラと降っている。
反対にバスの中は南国のように暖房が効いていて、今度は足先がひりひりするほど暑い。せっかく買ってきた蘭の花が全て開いちゃうんじゃなかろうか、と本気で心配してしまった。
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機内で読んでいたバンコク・ポストに、また身元鑑定に関するニュースが出ている。タイの有名検死専門家のポーンティップ女史は、27日からプーケット入りし、タイではまだ数少ない鑑定スタッフと知識のない一般アシスタントを使って精力的に働いている。女史自身が癌に冒されているにもかかわらず、だ。
そんな彼女が再三政府に申請していた「身元確認センター」のオープンがやっと認可された。一昨日書いたように、大量の遺体はドライアイスを追加されながら3つの寺に安置されている。十分な設備もスタッフも与えられないまま、すでに津波発生から10日以上、身元不明の遺体も3000体を超えた。政府の対応としては少々遅いのではないかと思うが、これもまたタイがいまだ「発展途上国」である理由のひとつなのだ。
救援物資は次々と届けられ、様々な国々から億単位の援助が申し出られている。しかし、それを的確に処理する人材と組織力も、残念ながらタイには欠けている。その一端はわたしも空港のボランティア体験で見たが、能率がはなはだしく悪い。援助活動に関しては、「誰が何をするのか」というガイドラインが不足しているため、せっかくの物資や寄附が届いても放置されたままのことが多い。