同僚のフランス語教師がどうも具合が悪いらしく、休んでいる。
普通ならフランス語の授業はフランス語教師が「もし空いている時間帯だったら」カバーするが、今日は運悪く皆授業をしている4時間目。
「悪いんだけどさあ、初等部のほうに行ってもらえるかなあ」休んだ教師の穴埋めに奔走する人事担当が、済まなそうに言った。「もちろんです。何年生ですか?」「3年生なんだけど」「えっ(絶句)」
わたしが昔非常勤で行った何週間かの小学校の経験は6年生。うわー、3年生なんて何をやったらいいんだろうとうろたえる。7年も働いたけれど、この学校の初等部は初体験だ。
道を挟んで反対側にある初等部は寮も併設しているが、中・高等部の教師であるわたしは数えるほどしか行ったことがない。校舎の中にはいると、わたしの胸辺りに届くか届かないかの小さい体が沢山走り回っている。中・高等部と全く同じ制服だがこれもミニサイズ。並んでいる本棚も椅子も机も全て小さい。いや、ガリバー旅行記のリリパット国体験のようだ。
教室に入ると、皆の目が好奇心をたたえてじっと見る。センセイがお休みなので代わりに日本語のセンセイが来たのよ、と言うとすぐさま「ワタシ、日本語知ってる」と胸の前で手を合わせてお辞儀をする女の子。違う違う。このぐらいのトシなら、ときちんと日本のお辞儀の仕方を教えてやると、25人全員がわたしの真似を熱心にして、ああ、かわいい。
いや、いけない。わたしはここにフランス語の授業のカバーに来たのだった。
休んでいるフランス語教師のメールに書いてあったように、コンピューターのフランス語学習ソフトを使ってペアでお勉強。20分ぐらいたつと、半分ぐらいの子が飽きる。で、2名のペアにして動物の自己紹介ごっこをさせてみる。20分して、また半分ぐらいの子が飽きる。その会話をノートに書かせてみる。これは、もう10分ぐらいでまた何人かが寝っ転がって「飽きた」ということを全身で訴えている。
あと10分。メールに書いてあったことは全部やったのだが、なんだかザワザワしてきた。同僚教師のクラスなので、一概にわたしがやりたいことが出来るわけもなし…と思っていたが、さすがに最後の10分ぐらいいいだろう、ということで「さあ、最後の10分で日本語の1から10まで超特急学習してみない?」「やるやるやるやる!」
これは、昔よくやった。「1はItchy(英語で、かゆい」」「2はKnee(英語で、膝」「3はSun(太陽)」を動作を交えながらやるんだが、始めてみたら大ウケ。まるでサウンドオブミュージックのドレミの歌である。もうフランス語そっちのけで、25人全員で「itchy、knee、sun、she、go、rock、nana、hatch、queue、dhu(fish)」と踊りながらやっていたら、隣の教室の中国語の教師が目を丸くしていた。そりゃあビックリするよなあ。
最後の10分はあっという間で、オマケに「さようなら」の正しい発音を教えて帰ろうとしたら、「センセイ、今度も来るー?」と3人抱きついてくる。抱きつかせたまま、ずるずると教室の出口まで行ったら、あと3人ほどまたくっついて来た。おい。重いぞ。
「今日、絶対ママに教えるんだ。日本語を10まで数えられるんだよって」いいのかね、こんなことウチでバラされて。
全員が「さようならー」と一生懸命手を振る中、上級生しか教えたことのない日本語のセンセイは「初等部もいいけど、肉体労働だな」と腰をさすりながら中・高等部の校舎に戻って行った。
ああ、もう本当に、がびさんのお話は面白いです(笑)
そして、それ、わたしも知ってますよー、itchy knee sun!!英語話者には大の大人にも大ウケです。子どもたちもきっと、すっごく楽しかったでしょうね。教室の様子が目に浮かびます(笑)
おお、yukiさんもご存じでしたか!
この日本語の1から10までの数え方。子供たちは大喜びです。いや、しかし小学校3年生ぐらいを20人なんて初めてでしたので結構疲れました。小学校のセンセイたちはこんな肉体労働を毎日やっているんですねえ。
私も20年以上前にオーストラリアの日本語学習者から聞いたことあります。そうやって上智大学?で教わったと言ってました。 nana、hatch、queue、dhu(fish)はもう忘れていましたけど、ガビさんのお陰で今日思い出しました!
ありがとうございます。
まあ、空さんもご存じでしたか。
でも、他の国ではもしかしたら違ったふうに教えるのかもしれませんね。queueやdhufishというところでアメリカ産でないのがわかりますが。これってオーストラリアで作られたのでしょうか…。