したがって、どんなにデコボコであろうが、どんなに傾いていようが、どんなに色がはげていようが、まだ動くのなら乗っていてもかまわないらしい。とてもじゃないが日本ではお目にかかれないようなボロ車の走るパースでは、どんなことが起こっても驚いてはいけない。
たとえばアンテナ。
外に向かって延びている車のアンテナは、比較的壊れやすいもののひとつである。車検のある国ではこれもチェックの対象になるのであろうが、ここでは音さえ出りゃあ何をくっつけても文句は言われない。
写真ではわかりにくいだろうが、この車のアンテナ代わりに立っているものはなんとあの、クリーニング屋から戻ってきたジャケットがかかっている、針金製のハンガーである。安物ハンガーをびよ〜んと伸ばして、本来ならアンテナが立っている場所にねじこんであるのだ。
この車は新しいから、たぶん常用されているハンガーではなく、アンテナが壊れてしまったのでとりあえずラジオを聴くために立ててあるのだろう。が、オンボロ車ではすでに車と一体化してしまっている針金ハンガーもよく見られるのだ。その場合は、常用されていることを示すために、針金は様々な造形芸術品となる。やわらかいから比較的形を作るのも簡単なのだ。ハート型あり、煙型あり、家の屋根型あり、三角矢印型あり、と実にバラエティにとんでいる。
今回は信号で止まったので撮影することができたが、普段は大笑いのみで通り過ぎることが多い。いつか「針金アンテナ」芸術を撮ってみたいと思うが、さていつになることやら。