がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

近視で乱視で老眼も、一度の矯正

夜雨戸を閉めようと思ったら、白いものが戸袋の先で揺れた。軒から落ちる雨水に 打たれたくちなしの花のつぼみだ。もうすぐ開きそうな気配である。今日のような霧雨は、傘をさしていても身体中にまとわりつくようであまり気持ちのよいも のではないが、夜の裏庭で濡れそぼった真っ白い花をいっそう可憐に見せる。

その「傘を使わせるのか使わせないのかハッキリしてくれっ」と 言いたくなるほどのふわふわ霧雨と雑用の合間を縫って、コンタクトレンズを買いに街へ出る。わたしの目は、眼鏡の厚みがデコボコになるくらいのトンデモナ イ乱視なので、今ハヤリのソフトコンタクトレンズでは視力がきちんと出ない。だから20年以上もっぱらハードコンタクトレンズを愛用している。
様々な検査のあと、最後に「それでは近い距離の検査をします」と言われて、初めてわたしにも「老眼」がこっそりと訪れたことを知る。わたしの知り合いのように コンタクトレンズを着けたまま、その上にさらに読書用眼鏡をかけるのかと思って憂鬱になったら、今はもっと便利なマルチコンタクトレンズなどというものが あるらしい。眼鏡とは違う構造の「累進多焦点方式」(何という難しい日本語)で、下を見ながら階段を降りても、遠近両用眼鏡のように踏み外してコロゲ落ち ることはないという。
ド近眼だった亡き父が新聞を読むときに眼鏡をはずすのを笑ったとき、「近視で乱視で老眼」の三重苦は今にあなたにも訪れるよ、と言われたことを思い出した。三重苦は訪れたが、ひとつで三役のコンタクトレンズをつけるだけで視力は矯正できる。便利になったものだ。

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