がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

裏庭に新しい隣人を

都市化の波はのどかなパースにも押し寄せているようで、近頃では”rear block”と呼ばれる土地が不動産情報の大半を占める。昔は1000㎡ほどの土地付きの家がフツウだったらしいが、それを持ち主が半分に区切り、裏庭 だった場所を土地のまま、あるいは新築の家を建てて売り出すのだ。500㎡もあれば十分じゃないか、と狭い東京の家に育ったわたしなんぞ思ってしまうのだ が、こちらでは違う。

「まず」と、こほんと咳をしてから友達は語り始める。「500㎡の土地と言ったって、それにはオモテの道から自分の裏の家ま での道がそれには含まれているんだ。裏の家にも駐車場は必要だからね。」なるほど。「ということは、それでもうすでに100㎡は少なくなってしまう。そし て、車が裏で切り返せる場所ってのも必要。オシリから入ればいいだろうと思うだろうが、法律で決まっているのさ。そして、左右前後に3m塀から離して家を 建てなきゃならない。」おおそれなら2階建てね、わたしがチャチャをいれると「ちがうっ」とジロリ。「回りが全部平屋なのに、市がいきなり2階建てを許す と思うかい? プライバシー侵害だよ。」おお、そんなこともあるのか。「そんなわけで、庭も作ろう、物置もいるなあ、なんて言ってたら、やっぱり150㎡ くらいの平屋になってしまうんだ。」

しかし、こちらのひとたちは通勤に30分かかるだけで「遠いなあ」などと言うが、実際町から30分離れたとこ ろには、まだ緑も多いエーカー売りの土地がごろごろしているのだ。ちなみに1エーカーとは4047㎡である。ただし、電気とガスがまだ引かれていないなん てところも、まだある。若い夫婦などは、だから少し遠いところにある設備の整った分譲住宅地に新しい家を買って住むことが多い。町の中の家はあまりに高す ぎて、手が届かないからだ。

そういう地元の話をしてくれた友達は、最近南の方に家を建てているらしいが、なんと土地は1500㎡だそうだ。しか し、建築の許可や契約が済んでから、実際に鍵を渡されて住むまでに、9ヶ月かかるという。なんて気の長い話だ。「だから、施工が始まってやっと、ウチは子 作りに励めるってわけさ」さらっと口をすべらせたが、もう後のマツリ。他の連中からヤンヤとはやしたてられ、彼は亀のように首を引っ込めた。

写真:家どころかアパート住まいのわたしの小さなパティオで、暴風雨にも負けず開きだした可憐な白椿のつぼみ。

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