がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

バッセルトンへの日帰りドライブ旅行:Busselton Jetty 海中観測所

バッセルトンにある「南半球で一番長い1.8キロという木製桟橋」は確かに長い。
暇にまかせてゆっくり歩くひともいれば、途中で魚釣りをしているひともいる。桟橋から木製階段を降りてそこから海に入るひともいる。わたしが着いた午後3時ごろには、中学生だか高校生だかの子供たちがキャアキャアと嬌声を上げながら海に飛び込んで遊んでいた。

右手の浅瀬ではやはり子供たちが遊んでいて、イルカが時々顔を出すのが見えた。実にのどかである。

桟橋には小さなチケット売り場兼土産物売り場があり、ここで予約しておいたチケットを受け取った。桟橋のど真ん中を走るチンチン電車とガイド付き海中観測所ツアーのパックだ。3時近かったので1.8キロの往復では暗くなってしまうからだ。

まだ電車が走っていないので、線路をまたいで散策をする家族もいる。ただし海辺のことで風が強く、半袖で車から出てしまったわたしなどは肌寒くて困った。オーストラリア人の常で、ジャケットを着ているひともいれば袖なしのTシャツのままのひともいる。寒さを感じる肌質は皆違うということか。

桟橋には電車の乗り降りと観光客案内のために、水色のベストを着た高齢者たちがボランティアとして働いている。待っている間に色々と周辺の事情を教えてくれたり、子供をあやしたり、冗談を言い合ったりととても楽しい雰囲気。

はるか彼方に小さく見えていた電車がやっと着いた。これから出発。

電車は歩く速度よりほんの少し速いぐらい。ゆっくりゆっくりと進む電車に揺られながら、午後の日差しを楽しむ。線路の横を通るひとたちに触れるくらい近い。魚釣りのひとたちがベンチでひと休みしていて、手を振ってくれる。

海中観測所に到着。

中に入ると、すぐに土産物屋。そして螺旋階段を降りて、ガイドと一緒に海中観測所に入った。海中が見られる窓には11センチの厚さのアクリルガラスが埋め込まれ、「向こう側」にもこちらの様子を興味深く観察する魚たちの姿がある。橋杭はジャラの丸太で、長さ16メートルほどのものを海底のライムストーンに打ち込んである。

水族館ではないので、何かイベントがあるわけではない。ただし、ほとんどの丸太にはサンゴがコロニー(=サンゴ礁)を作ってゆらゆらと海中で揺れ、その間を塗って魚たちが自由に泳ぎ回っていて、見ているだけで幻想的だ。
サンゴと言われるまで、一体コレはなんだろうと思ってしまった。まるでコップを洗う細長いブラシのようだ。無脊椎動物というから「動物」なのだろうが、不思議なイキモノである。ガイドが「あなたたちはラッキーだったのよ!」と言ったのは、そのサンゴがちょうど食事時間に当っていたため、このような白く細長いブラシのようなものを海中に出して食事をしているから。普段はこの「ブラシ」は引っ込んでいるらしい。

細かい小さな魚の群れは、アンチョビの稚魚。

この何やら赤いのも無脊椎動物。イソギンチャクやナメクジと同じような種類だと言う。

不思議な、不思議な世界だ。

外に出るとすでに4時半を回っている。またトコトコと進む電車に乗り、桟橋のたもとまで戻ってきた。

さて、この電車だが線路が1本しかないのにどうやって方向転換しているのだろうと思ったら…なんと、この電車のアタマにはタイヤもついており、連結したワゴンから離れてそのまま「ぶぶうん」とエンジンをつけると、車のように回れ右をして…

なるほど、こんなふうに後ろだったワゴンに連結するわけなのだ。

そのまま車中で飲むボトルの水だけを買い、すぐにパースに向けて出発した。何しろ、2時間以上の旅である。走っているうちに日が落ち、段々と車が増え始め、周りに家が見え始めた。真っ暗だが、家やビルの灯りが明るい。パースが近い。

追い越し車線に大きなトラックが制限速度の100キロを少し下ぐらいで走っている。それを追い越そうとスピードをあげ、追い越したとたん右手でフラッシュが明るく光った。わたしの車はたぶん110キロは出ていたと思う。丸1日制限速度を守って安全運転していたのに、最後の最後で気がゆるんだのか。隣の友達が「あーあ」と大きくため息をついた。

それでも最後のスピード違反さえ除けば、楽しい1日だった。
片道2時間半の旅は、観光と食事を含めたら1日でできるギリギリの距離かもしれない。パースは先のブログ記事にも書いたように、他の都市からはとんでもなく離れているので、1日で行ける場所はかなり限られてしまうのだ。でも、ほんの少し探してみれば、なかなかいい小さな町があり小さな歴史もある。

日常の忙しさから離れてこうした違う世界に触れる。ささやかなことだが、気分転換だけではなく頭と心にも風を通してやれるような気がする。

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