Die Welt(ディー・ヴェルト、ドイツ)オンラインで、わたしは初めて実際の身元鑑定がどのように行われるのかを知った。
現在ドイツからは検死専門家たちが40人がカオラックを含むタクア・パ地区に送られているが、彼らは昨日伝えたようにスイス、日本、など総勢300人とともに、身元確認を急いでいる。
各々の遺体に関して、彼らは国際的標準とされている身元確認プロトコルを作成する。確認に必要なありとあらゆる特徴とサンプル、そして確認を助けると「思われる」全ての事柄が詳細に記録されるのだ。もちろん、遺体が身につけているもの、指輪、IDカード、メガネ、服などもその一部なのだが、今回の津波犠牲者に関しては、多くを望めない。彼らは、そのほとんどが裸か、水着という軽装なのだ。そして、身体の特徴。身長、髪の色、骨格から、ささいな傷、手術の跡、ほくろ、爪の形、眉の形、鼻の高さ、口唇の特徴など。
DNA鑑定に必要なものも採取される。口中を洗浄し、歯型をとり、歯を2本抜き取る。骨のサンプルを採取する。そして、遺体がいちじるしく損傷している多くの場合、指の皮をはがし、それを手袋をした自身の指にはりつけて指紋をとる。
多くの場合、遺体ごとに約30分から60分かかると言われる。
「わたしたちの仕事は人道的な使命なのです。こうして亡くなったひとびとにまた名前を与え、残った家族に最後の別れを告げさせてあげるのですから」と、警察検死医であるピーター氏は語った。
10日付バンコクポスト紙も、DNA鑑定に関しての記事をトップに上げている。
800体がすでに土葬されていたが、9日に全て掘り返されたのだ。改めて骨と歯の記録を取り、記録番号を記したマイクロチップを埋め込むためらしい。
責任者であるタイ検死センター副所長のポーンティップ女史は、「決してタイの検死スタッフたちの水準を疑われたからではなく、遺体にマイクロチップを埋め込み、冷凍安置所に移すためなのです」と強調しているが、これはどうだろう。暑さのため遺体につけられたタグが損傷し、またも確認やり直しということが実際起こっていたのだし(1月5日エントリ)、残念ながらその300人からなる各国からの助っ人たちが組織だって動き出してからというもの、少なくとも遺体のタイ人・外国人比と、その確認さえできないその他の遺体の数に変化が生じているのだ。
現在のところ、確認されたタイでの津波死者は5305人だ。土曜日までは、そのうちのタイ人死者は2578人と信じられていたが、今日になって1792人にまで下がっている。2516人と信じられていた外国人死者は、今ではなんと1329人だ。
残りの2184人に関しては、国籍すら不明なのだ。土曜日までは国籍不明の死者は211人とされていたから、いきなり10倍になってしまったことになる。なんということだ。要するに、身元確認作業に外国からの助っ人が加わってから、これまでにタイ人検死スタッフによって根拠なしに「タイ人」「外国人」と分けられていた約1974体が「国籍を確認するだけの資料がない」と判断されたということになるのだ。そうしたタイ人検死水準への疑念が最初からあったからこそ、すでに土葬にされた800体が掘り返されたのではないか。
どこで読んだのか忘れたが、たしかニューヨーク9月11日の死者のうち、DNA鑑定ですら身元の判明しない遺体がまだあるらしい。
タクア・パ地区に冷凍安置された3200体以上の遺体を考え、そして行方不明となっているひとたちの家族のことを思うと、津波後の活動はまだまだ始まったばかりと言えるだろう。
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