灼熱地獄の夏から一転、「日陰に入ると涼しい」のが嬉しい。
日中25度−30度、日没後15−18度の気温は、真夏と真冬を除けば、ほぼ1年の半分以上の平均である。空は相変わらずぽか〜んと抜けるように真っ青だし、空気も澄んでいる。
絶好の散歩日和になったので、朝のうちに、以前住んでいたアパートの近くに車で行ってみる。ここには、小さな墓地があるのだ。土曜日ということもあって、ちらほらとお参りのひとの姿も見かけるが、この生者と死者の「無言の共存」という空間が、わたしは何故か好きである。
最近話題になったが、パースの二大墓地が、オーストラリアで初めて葬式ウェブキャスティングのサービスを始めた。1時間あまりのチャペルでの葬儀の模様を、インターネットで実況中継するのだ。
配信は、あらかじめ時刻とパスワードを記したメイルで通知されるので、地方や外国に住む親戚、知人も同時刻にネット上で葬儀に参加することができる。費用は約8000円ほど、ずいぶん安いなあと思ったら、経費だけが請求される非営利のサービスなのだそう。
移民の国オーストラリアでは、外国に知人や親戚を持つひとも少なくない。突然の不幸に、ビザ取得や飛行機の予約さえままならないこともある。費用の問題もあろう。そうした数々の制約にわずらわされないこのサービスは、ネットの普及にともなってこれから全国的に広まるにちがいない。
しかしフツウの葬式と言うと、もう何年も顔をあわせたことのない親戚と会い、また昔の知人と旧交を温めたりというオマケがついてくるものだ。わたしも何度か経験したが、そのたびに「いや、葬式のときだけ顔をあわせるんじゃなくって、これからは時々席をもうけましょ」なんぞと約束をし、結局その次に顔をあわせるのはまたもや葬式のときである。
そうやって、いつかは「その葬式のときだけ顔をあわせるひと」の葬式に出たりするんだろうなあ。いや、もしかしたら彼らのほうが、わたしの名と時刻とパスワードを記したメイルを受け取るかもしれない。