デラシネ@Perth: 2004年5月アーカイブ

夕食のときに見ていたニュースショーで感激し、玄米ご飯を喉につまらせてしまった。
12歳の少年が39歳の父親の命を救ったのだ。

元々心臓に持病のある男性がいきなり裏庭で倒れたとき、側には老いた姑と自分の息子しかいなかった。顔は紫色になり、息をしている様子もない。驚いた姑が救急に電話をしたときの声が流れたが、理性を失い何を言っているのかわからない。「ただ救急車を呼んで。息をしてないんだから。」と訴える。これでは緊急処置も何もできるどころではない。
オペレーターが「他にひとはいませんか」と聞いたあと、次に電話口に出たのは12歳の息子だった。
父親の様子について聞かれると、詳細にその状態を説明する。「人工呼吸はやったことある?」の声に、「ありません。でもやってみます。」とはっきりとした答え。
そして、電話の指令通りに息を吐き入れ、胸を押すという動作を繰り返す。その動きは冷静に救急車が来るまで続けられた。
結局、少年の人工呼吸によって父親の命はとりとめられたのだ。救急車が来るまで放置されていたら、助かる見込みはなかったと言う。

インタビュウに「とても怖かった。怖くて怖くてたまらなかった。でも、ボクがやらなきゃパパは死んじゃうんだ。だめだ、だめだ、やれっ、やれって、って思った。」幼い顔に父を救ったという誇りを浮かべて、少年は語った。

「子供はね、子供扱いしていると、子供っぽくふるまうんだ。一人前のオトナ扱いをすると、不思議と何でもできるんでビックリするよ。」
友達がふともらした言葉を思い出した。
ラッセル・クロウ主演の最新ビデオをで、ナポレオン時代当時の幼い海軍仕官たち(12歳から15歳くらいか)が、立派に陣頭指揮をとって冷静に判断を下すのに感心していたときだ。時代は違えど、「子供扱いをされなかったとき」の子供の態度は同じなのかもしれない。

最後に、元気に病院から退院する父親の姿とその周りを子犬のように飛び回る少年が映し出された。先ほどの落ち着いて当時の模様を話す姿とは大違いだ。

なんか子供って不思議だなあ。

早いとこ見つけておいたほうがよいかな、と不動産屋に行って物件を当たった。今月末に引っ越すことになっているからだ。土曜日ということもあり、かなり混んでいて15分も待たされる。

選択肢は広いのだが、問題はゆきちゃんだ。レンタルはペット禁止のところが多い。わたしの選んだ物件は次々とその禁止事項ではねられ、最後に残ったのはふたつのみ。
オーストラリアでは、身分証明書の提示と100ドルのデポジット(後で返してもらえる)で鍵を受け取り自分で勝手に物件を見に行く。日本の不動産屋のように懇切丁寧な道案内で連れていってもらえるわけではない。

わたしの現在住んでいる街の中心地から車で5分、パースでは東地区だ。タウンハウスと呼ばれる壁のくっついた二階建て長屋の並ぶ一角は、その近くのちょいと瀟洒な繁華街からも歩いて5分だ。3部屋にバストイレつき、一階のリビングダイニングもオープンキッチンで、今よりは狭いがまあまあの広さ。これにタタミ10畳ほどの裏庭と駐車場もついている。わたしが隅々まで見ながら考えていたら、ドアがとんとんと叩かれぞろぞろとアジア系学生たちがはいってきた。どうやら、不動産屋が送った次の候補者たちらしい。
オーストラリアでは、学生が家をシェアして住むことが多いのだ。この物件はメインの寝室にはアンスィート(en suite)と呼ばれる専用バストイレが付き、なおかつもうひとつりっぱなバストイレが他の寝室用にあるので、2-3人で住むにはもってこいなのだろう。
英語があまり出来ないところから英語学校の学生さんと推察したが、みんなでうなずきあってニコニコしている。たぶん気に入ったのだ。それにしても、総勢6人ってアナタ、3つしか寝室がないのに一体このうち何人が住むつもりなんだろう。

彼らを残して一足先に不動産屋に戻ったわたしは、徒歩で彼らが着いたときにはすでに申込書を書き終わっていた。実は、契約開始が2週間ほど先になるわたしのほうが分が悪い。その物件は今すぐに入居可能だからだ。
もしその学生たちの入居希望が即と言うなら、彼らに渡ってしまう可能性が高い。

と思ったら、夕方不動産屋の閉まる時刻になって電話があった。
大家がわたしのほうを選んだと言う。何人かで住む英語学校の学生たちより、高校教師のほうが信用されたのかもしれない。えへん。
しかし、ゆきちゃんのせいで「ペット保証金」が二万円ほどかかるらしい。彼女が次々と窓をぶち割ったり、壁に体当たりして大穴をつくったり、天井に向かってオシッコしてシミを作ったりしないことを願うばかりである。