食話休題: 2005年12月アーカイブ

prawncoctail.jpg浅いカクテルグラスに小指の先ほどの海老のむきみ、マヨネーズとケチャップのソースがとろりとかかっている。これがシュリンプ・カクテル。Shrimpは英語では小エビのことだ。しかし、今わたしがいるのは海老養殖大国のタイだ。一番大きい車海老 (prawn)を使わなければ、ね。

殻がついているときには、ゆうに十五センチくらいはあった。海老が大きいということは当然背中のスジも長くて太い。殻をむいてこのスジをとり、尾だけは残しておく。
そして、ぐらぐらと煮立っている湯でさっと茹でるだけ。海老のカクテルに使うドレッシングは、サウザンド・アイランド・ソース (Thousand Island sauce) だ。マヨネーズとケチャップで作るが、ちょいとスパイシーにしたければケチャップよりチリソースのほうがいい。そして、もっとヘルシーに行きたいときには、マヨネーズの代わりにプレーンヨーグルトを使うこともある。
今晩のアペリティフは、この最後のヘルシー・バージョンだ。

車海老はあまりに大きすぎて、とてもじゃないがカクテルグラスに乗らない。普通の皿を使って、ベビーサラダを敷きその上にどさり。ディルを添えて出来上がり。

asiancoleslow.jpgバンコクにいると、外食が続くことが非常に多い。そして、合間にシャキシャキしたものが食べたくなる。胃が疲れてきた証拠だ。

鶏肉はあるので、付け合せにコールスローでもと思ったが、肝心の生食用野菜がない。金曜日の夕方に買い物なんかに出かけたら、自宅に帰り着くころには餓死している。週末の始まりは、渋滞がひどいのだ。特にわたしの住む地域は、歩いたほうが速いくらいだ。
 テラスから見えるくらい近くに大きなスーパーマーケットがオープンしたのだが、歩いていくにはちょいと遠い。待てよ。こういうときのために、メイドがいるんじゃなかったのか。買い物用の自転車まで、経費として与えていることだし。
「ねえ、ちょっとそこまで行ってキャベツを買ってきてくれない?」
「キャベツってなんデスカ」
辞書がない。秘書は電話中だ。仕方がないので、絵を描いた。納得したようで、ゆっくりと鷹揚にうなずく。昼寝のじゃまをして済まないと思っているわたしより、メイドのほうが態度がでかい。

しかし、帰ってきた彼女の手にあったのはキャベツじゃなくて白菜だ。
「キャベツなかったから、これ買ってきマシタ。味おなじデス」
同じじゃないって。

シャキシャキだけは変わりないので、こうなりゃ白菜使ってサラダだ。塩をかけてしんなりさせようかとも思ったが、それでは歯ごたえが違う。そのまま使うことにした。
千切りにはできないので百切りくらいにし、ニンジンもおなじくらいの太さ。チェリートマトは半分に切り、香菜はざく切り。
ドレッシングは、醤油、ごま油、ライム汁、みりん、そしてすりゴマとニンニクだ。これを味を見ながら合わせ、一気に野菜にふりかけて混ぜ合わせる。

図らずもアジア風コールスローとなってしまったが、意外や意外、さっぱりして歯ごたえも風味もよろしく、美味しく出来上がった。

roastbeef.jpg冬の乾期に入っていたバンコクは、着いたのがほとんど真夜中だったせいかとても涼しい。今朝起きてから新聞を広げてみたら、何と十八度しかなかったという。昼間でも二十五度ほどだ。エアコンを使わないで過ごせるバンコクというのは、年に何日もない。

こういうとき在日外国人たちは「嬉しいねえ」などと言いながら、パティオやらテラスやらで外の夕食を楽しむものだが、タイ人はセーターを着込んで「寒くて困るねえ」とこぼす。体感温度の違いか。
久しぶりに顔を出したオフィスでは、秘書がセーターの上にジャケットを着て、おまけにスカーフまで巻いちゃっている。二十五度でそこまで寒がるところがタイ人らしい。

今晩は、パースから一キロ半ほどの牛肉の塊を持って来たので当然ローストビーフだ。ローストビーフなどと言うといかにもタイソウなご馳走のように聞こえるが、実態はオフィスで仕事をしながらできる。

まず赤ワイン、粒マスタード、ローズマリー、タイム、にんにく、塩、粒コショウを石のすり鉢で混ぜ合わせ、ぽくぽくと叩き潰す。そしてオリーブオイルをたらりとたらす。これを肉に塗って冷蔵庫で三十分ほど。その間にオーブンを二百度に温め、ジャガイモ、ニンジン、ズッキーニ、赤ピーマン、カリフラワーを一口大に切り、塩、コショウ、オリーブオイルを加える。肉をオーブンに放り込んで四十分、オーブン用温度計をど真ん中に差込み、周りに野菜を加え、また四十分ほど。野菜に焦げ目がついて、肉の真ん中の温度が五十五度くらいを指していたら、出来上がり。あとは、肉にホイルを巻いて十五分ほど落ち着かせるだけ。こんな風に真ん中がうっすらと赤いローストビーフは、大きさによってもオーブンによっても時間が違ってくるので、わたしは温度計を使う。
ミディアムレアレアのローストビーフは六十五度というひともいるが、わたしは五十五度から六十度で十分だと思う。肉は落ち着かせている間にも、すこし温度が上がるからだ。

涼しいテラスで、そよ風に吹かれながらの夕食も楽しい。

gizzard.jpg砂肝が好きだと言うひとは、欧米人の中にあまりいない。
わたしが会ったひとたちの中で、唯一「ダイスキー」と言ったのはイタリア系アメリカ人だけだ。それも「子供のとき、感謝祭の七面鳥のローストに添えてあったヤツを、妹と奪い合って食べた」と懐かしがっているふうで、鶏の砂肝をそれだけ食べるというわけではないらしい。

オーストラリアでも砂肝は買えるが、堂々と他の肉と一緒にウィンドウで売られているのは中華系肉屋だけ。スーパーでは、何と犬猫用の生肉と一緒のケースに入れられている。砂肝は犬猫用かい、ふん。
そういう場所にあるだけあって、処理も非常に雑だし、どっさりとつめこまれたパックは重い。1キロ約四百円ほどの安さで、きちんと脂やら血やらを取り除いてもらおうと思うほうが間違っているのかもしれない。日本やタイのように、キレイに洗浄されてひとつひとつスチロール皿に並べられてパックされてはいない。

だから、こちらで砂肝を食べるときには、「下ごしらえ」という長くクルシイ道のりが待ち構えているのだ。仕方なく、キレイに洗って回りにくっついているその血と脂をとり、ぷっくりした丸い砂肝の真ん中にある筋をこそげ取る。軽く塩コショウして、片栗粉をぱらぱら。
これが出来たらあとは簡単だ。赤唐辛子とショウガをざくざくと切って、煙のたつほど熱した中華なべに放り込み、香りがたったら今度は細ネギのざく切りを加える。ざっと混ざったら、砂肝だ。わたしの家には中華なべ用の強力ガスバーナーがあるので、火力は強い。最後に豆板醤を加えて炒め、砂肝にからめる。

中華小松菜は炒めずに、ショウガのスライスを浮かべて塩茹するといい香りに。