食話休題: 2004年11月アーカイブ
九週間しかない第四学期は、もうそろそろ本格的に忙しくなってきた。採点に成績表の準備で、自宅で机に向かうことも多い。日曜日の夜はそんなわけで料理をする気分になれそうもないので、ランチにクスクスを作ることにした。
クスクスを最後に食べたのはいつだろう、と思って自分の日記の過去ログを見たら去年の12月15日だった。暑くなると食べたくなるのか。
今回はちょいと趣向を変えて、海老をメインにしてみる。
紙袋にクーミンパウダー、塩、コショウ、小麦粉をいれ、そこに下ごしらえした生海老を加える。袋の口を握り、ばさばさと振って混ぜ合わせる。紙袋を使うのは、アメリカ人に教わったフライドチキンの作り方の応用。こうやって混ぜると、容器がいらないからマコトに便利なのだ。
それを、油を少々多めに入れたフライパンで焼く。
クスクスが出来上がってから、イタリアンパセリとレモンの皮をたっぷり加え、ケイパーのみじん切りを混ぜ合わせて塩コショウし、最後にざっくりと生食用ホウレンソウを混ぜる。これに海老をのっけて上からじゅうとレモンを絞った。
クーミンは海老にとてもよく似合う香辛料だ。本格的なカレーにもはいっているが、中近東料理にもよく使われる。こんな感じに焼くだけでも、シンプルながらとびきり美味しいのだ。
暑いのなんの。今日は午後になって38℃を記録してしまった。
先週は雨が降ったため最高温度19℃なんて日があったのに、さすがパースの天気は変わりやすい。
こういうふうにいきなり暑くなると、もともと手抜きの夕食作りにさらに拍車がかかる。火を使いたくはないが、使うならなるべく短い時間で。
調理用石臼をどっこらしょと出し、ここに萎びる直前のタイムとバジルをぱらぱら、海の塩、粒コショウ、マスタードを加えてから、がんがんと叩きつぶす。そこにオリーブオイルをたらーりとたらすと、ステーキ用の軽いペーストができる。仔牛のコトレット(英語圏ではチョップだ)に塗りたくってから、グリルへ。肉を焼いている間に、フライパンにバターとオリーブオイルを溶かし、チェリートマトを炒めてからバジルをぱーらぱら。ベビーサラダのミックスを皿に敷いてステーキを置き、チェリートマトのソテーをかけてオシマイ。
調理時間約15分。
写真上はわたしの愛用モルター(小型石臼)とペストール(石棒)。かなり重いがサイズは行平鍋ほどもない。

こう暑いと「何にも食いたくねぇ」という気分になって、ひたすら西瓜ばかり食べている。冷やした西瓜は大好きなのだが、これだけで日曜日を終わらせては、せっかく昨日買ってきたイカを腐らせてしまう。
重い腰を、よいこらしょと上げた。
切り目を入れてからざくざくと切ったイカは、フライパンでショウガとチリの香りを出してから手早く炒める。これに粗塩と五香粉をぱらぱらとふりかけて、出来上がり。絹さやは塩茹でしただけだ。これにレモンを半分じゅうと絞る。
五香粉の香りがほんわりとただよって、やっぱりお腹がすいてきた。こういうシンプルな炒めものは酒のつまみにもいいのだが、今日は休肝日。明日のスピーキング試験で十一年生に「酒臭い」なんて言われたくないもんね。
寝不足ついでに、夕方は庭工事の業者がはいったため、昼寝さえできなかった。お腹はすいたが、外食に出かける気力もない。
白身魚の切り身があったのを思い出して解凍し、隣に放り込んであったサフランライスのかたまりも解凍。日曜日に市場で買った香りのよいトマト(熟してから摘み取ったもの)は、ざく切りにする。フライパンで玉ねぎと唐辛子を焦がさないようにじっくりと炒め、トマトとレモンの皮を削り落としを加えてさっと炒める。そこにパセリを合わせてレモンをじゅうと絞り、ソースの出来上がり。グリルした魚の上にのせて、電子レンジで温めたサフランライスを添えた。
本当なら平たいイタリアンパセリを使いたいところだが、普通のパセリしかない。匂いが強く口当たりが固いのが、残念。
いつも自前で作っていたイタリアンパセリを、引越しのせいで全てあえなく枯らせてしまったのだ。便利なのでまた育てようと思ってはいるのだが、使わないときはすっかり忘れてしまっている。
昨日、ベトナムで契約仕事をしている友達が、二週間の休みでパースに帰ってきた。食事前の飲み物でもパブで、ということだったが、ついでに食事もしちゃえと思い全員招待する。総勢四人だ。このくらいの人数だったら、ローストに決まっている。
ローズマリ、ニンニク、タイム、オリーブオイルのマリネで昼間っから寝かせておいた子羊肉は、ラック・オブ・ラムと呼ばれるラムチョップを切らずにそのまま固まりで売っているものを使った。ラム肉は焼きすぎると固くなってしまって、美味しくない。しかし、今回はちょうどいい具合に、外パリパリ中バラ色に焼けて、肉汁もほどよくしっとりと柔らかい。一人分は骨三つから四つぐらいだが、こういう骨付きで焼いた肉は、ある程度ナイフとフォークで食べたら、あとはもう指を使って豪快にしゃぶりつくす。
付け合わせは、子羊肉と一緒に焼いた玉ねぎとジャガイモ、そしてゆでたカリフラワーだ。
「ここ三ヵ月間、ラムなんて食べたことなかったなあ」と笑う彼は、出張先であるベトナムの都市を決してホーチミンシティとは呼ばない。もう二十年もベトナムで土木関係の指導をしているというのに、彼にとってそこは今だに「サイゴン」らしい。
一度理由を聞いたことがあるのだが、彼は微笑んだだけで教えてはくれなかった。
映画に行く約束が七時だったので、六時半には家を出なければならない。
御飯は一人分ずつラップでくるんで冷凍してあるし、グリーンアスパラも牛肉もある。こういうときに登場するのが豆鼓醤だ。豆鼓(トウチ)は黒大豆を塩茹でしてから発酵させたものだが、この深みのある豆を唐辛子やらニンニクやらと一緒にペースト状にしたものが豆鼓醤で、普通乾燥してある豆鼓を刻んだりする手間が省けて炒めものをするときに非常に便利なのだ。
下味をつけておいた牛肉を強火で炒めて取り出し、刻んだニンニク、ショウガ、唐辛子、豆鼓醤を炒めてからアスパラを入れて合わせ、最後にまた牛肉をもどして軽く炒めるだけ。火を止める前に、たらりとオイスターソースをたらしてオシマイ。
通りすがりで入る中華料理屋の炒めものは、塩辛すぎたり味の素がたんまりはいっていることがよくある。こういう一膳飯を食べるくらいなら、10分かけて自分で作ったほうが次の日に身体がむくむこともない。
久しぶりに友達がふたりちょいと寄ったので、晩ご飯食べていったら、ということになった。
一番簡単なのに落ち着くのはいつものことなので、週末用にちょうど買っておいた丸ごとチキンを使う。背骨のところを肉切りハサミでちょきちょきと切り開いて「大股開き」をつくる。
さて、今日ハーブ用すり鉢でがんがんとつぶすのは、オレガノ、ローズマリ、タイム、パプリカ、粒コショウだ。ここにレモン汁とオリーブオイルを加えて、マリネ液が出来上がり。鶏肉に塗りたくってしばらく置き、その間に白ワインを一本開けてちびちびとやりながら話しこむ。
三十分くらいしてから鶏肉を庭のバーベキューに置き、ふたをして一時間とちょっと蒸し焼きに。コールスロウ用キャベツとニンジンのサラダは、サワークリームとマヨネーズを合わせたドレッシングで合える。これには、隠し味で少々の砂糖を忘れずに。火を止めたグリルで鶏を落ち着かせている間に、湯をわかしてトウモロコシを茹でてオシマイ。足りなかったら、パンはたくさんあるしね。
全部出来上がったころには、腹ッペラシのわたしたちはもう眼がランランと輝いている。
本当は、フライドチキン/コールスロウ/トウモロコシの組み合わせが正統な「三位一体アメリカ流」なのだが、今回結局「ブッシュがやっぱり勝っちゃったねえ」という「アメリカの底のふかあい保守層」の勝利に影響されて、脂っこいチキンはやめてしまった。
日曜出勤したあとで、大学入学共通試験のスピーキングで十九人の個人試験をしたのが月曜日。今日になってもまだ疲れがとれず、学校で生アクビばかり出る。
なんだか料理もしたくない気分だったが、ヒヨコ豆が食べたくなってサッサとサラダを作る。豆の缶を使ったので簡単だ。それにキュウリを同じくらいの大きさに切ったものと庭からむしってきたミントの葉を加え、サワークリームとタヒニと呼ばれる中近東料理に使う練りゴマを混ぜたソースと合える。解凍しておいた仔牛肉は、ミントとローズマリにレモンの皮をごりごりとけずってまぶし、焼いただけ。
ヒヨコ豆は、乾燥ものを一晩水につけておいて次の日にゴトゴトと2時間ばかり漬け汁ごと煮たもののほうが、やはり美味しい。缶のものはどうしても「カンヅメ」くさくって、ねえ。
しかしそんな暇があったら、今度の日曜日あたりは昼寝しているような気もする。


