エカマイのThe Accidental Butcherで美しいポークチョップを買う

前から気になっていたエカマイの肉屋。いきなり住宅街のど真ん中にぽつんとできたときには一体なぜこんなところに、とビックリしたものだ。よく通る路なのでいつか行こうと思いながらはや数年。

そのうちに噂を聞くようになった。こちらに住んでいる西洋人たちがよくここで肉を買っているというのだ。オーナーはオーストラリア人のホンモノの肉屋、スティーブ・クレイグだ。

オーストラリア産のビーフもラムも一通り揃っていて和牛まである。チキンとポークはタイ産だが、品質は最高のものを誇っていると言う。ソーセイジは自家製でこれも美味しそうだったけれど、今回は取りあえず「こんなに美しく処理されたコトレットはタイでは見たことがない」と思わず手が出てしまった豚の骨付き背肉、ポークチョップを買った。

ジャガイモがまだ残っていたので、付け合せはマッシュポテトと冷凍のベジタブルミックスだ。あまり時間をかけたくない、という魂胆がありありとうかがえる晩ゴハン…。

買ってきたばかりのポークチョップはまだ冷たいので、そのまましばらくキッチンで常温に戻す。その間にマッシュポテト用のジャガイモを茹でる。こればかりは冷水から茹でるので時間がかかる。40分ぐらいか。

小さな鍋には牛乳を1カップぐらい注ぎ、潰したニンニクのかけらを数個放り込み、フレッシュなタイム(はオーストラリア自宅の庭にしかないので、今回はスパイス瓶のローズマリー)とベイリーフ(これも見つからなかったので取りあえずいれていないが)を混ぜ、最後にオリーブオイルをたらりと足してから火にかける。沸騰したら冷ましてスパイス類をミルクで煎じる。
わたしはマッシュポテトにはバターもクリームも使わない。それよりは軽く煎じた牛乳ミックスのほうがはるかに胃に優しいからだ。ここに塩を味をみながら加えたらマッシュポテトの用意万端整った。

書き忘れたが、ジャガイモは必ず皮付きのまま茹でること。水っぽくなってしまうからだ。皮を剥くときに多少「あちちち」となるが、フォークとナイフでするりと剥けるのでご心配なく。

その間にはすでにフライパンにオリーブオイルをたらし、塩コショウにハーブ・スパイスを混ぜてポークチョップを両面ちょっと焦げるくらいに焼いている。2分ずつぐらいだろうか。その後は熱しておいたオーブンで中までじっくりと焼く。肉の厚さにもよるが、大体10分ぐらい。そして出したらアルミホイルで包んで5分。こんなふうになったら出来上がりだ。

テーブルに出したら、もうあとはかぶりつくのみ。肉はあくまでもジューシーに、だが噛みごたえもある上質の豚肉だ。

骨までしゃぶりつくして、ごちそうさま。

クリスマス・イブの味噌バターチキンロースト

スイスでは12月24日はまだ皆働いていて、夜は軽い食事を済ませてから教会へ行く日だ。真っ白な雪を踏みしめながら、きりりと寒い夜道を教会の鐘の音を聞きながら歩く。道の両側の家々では窓が美しく飾られ、蝋燭の火がキラキラと揺らめく。夏の美しい風景も好きだが、わたしはスイスと言うとなぜかこの厳粛で静かで寒いクリスマス・イブの晩を思い出す。

…などと書いているが、現在わたしが滞在しているのはタイのバンコクだ。毎年クリスマスはバンコクで過ごすので、24日晩のクリスマスディナーは必ず自分でつくる。

今年は少し趣向を変えて、アジア風にしてみることにした。つまり、Stuffingと呼ばれる詰めものを生パン粉から白飯に替え、材料にも味噌を加えた。味噌とバターがよく合うのは日本でもおなじみだ。

材料を山のように買い、夕方になってからカンパリソーダを飲みながら作り始めた。BGMはもちろんクリスマスソングである。

まずは詰めもの。
玉ねぎはザク切り、ニンニクはスライス、ショウガは千切り、赤トウガラシは小口切りに。それを5分ほどオリーブオイルで炒めてから、鶏挽き肉、シイタケとキクラゲのザク切りを加えてさらに炒め、そこに酒を加えてアルコールを飛ばし、味噌を多少多めに入れて、オイスターソースもたらす。ひと煮立ちさせたら火を止める。材料はいつものように適当なので、味をみながら「もう少し塩気がないとごはんを混ぜるからなあ」とオイスターソースをもう少し足してみる。

ボウルに具を入れ、硬めに炊いたタイ米(ジャスミン米)を茶碗に大盛り三杯ほど加え、ごはんが潰れないようにサクサクと混ぜ合わせる。パクチーとスイートバジルを刻んで加え、ここでまた味をみて「あ、やっぱりもう少し塩気が…」というわけで、醤油まで出してきてグルリと回しかけた。いい加減な料理だ。詰めものはそのままボウルの中で冷ましておく。もちろん行儀悪く手で少し口に放り込んで味見をしているので、味は完璧だ。うん。

さて、今回は味噌バター味なので、バターを湯煎にしてから同量の味噌を加えてガンガンと混ぜる。トロリとしたところでこれもまた冷ましておく。

次は丸鶏だ。冷水で中まできれいに洗い水気を拭き取った。そして、そおっとお尻のほうから胸の皮と肉の間に指を入れて隙間を作っておく。味噌バターはここにもタップリとすりこむので。ついでにパクチーをひとふさちぎって両胸の皮の下に滑り込ませる。味噌バターがどのくらい色をつけるかわからないので、出来上がったら見えないかもしれないが、取りあえず。

あとは詰めものをぎゅうぎゅうと…あ、しまった、卵を忘れた。詰めものは残りを丸めてローストしてしまうので、つなぎが必要なのだ。で、丸い卵をカウンターの上につい置いたら、もちろん落ちた。あー。

気を取り直して床を拭き、カンパリソーダをあおり、詰めものをぎゅうぎゅうと下から押し込み、パンパンになったところで皮でフタをしてから、楊枝で留めた。あとは、残りの味噌バターをまんべんなく塗りたくるだけ。天板にはニンジンの細切りをまるでイカダのごとく並べ、その上に鶏を置いた。丸鶏の脂がその間から落ちる仕掛けだ。ニンジンにも鶏の肉汁がかかり、あとで美味しく食べられる。

あとは180度のオーブンに入れて、焼き加減を見ながら1時間ほど。わたしは25分ぐらいたったところで、また味噌バターを塗り、今度はアルミホイルをふわりとかけてまたオーブンに戻した。

詰めものの残りは丸めて別のオーブン皿に並べ、最後の15分間だけオーブンで軽く焼いた。

ところで、わたしはこの写真にもあるように肉に刺す温度計を必ず使う。そして、肉の大きさに関わらず、目盛りの温度より大体10度ほど低くなったときに出してしまう。それからアルミホイルでしっかり包み、10分ほど置くのだ。こうすると肉の表面が乾かないし、まだ中では肉がちょうどよく焼けているからだ。焼きすぎでカラカラに乾くのは、目盛りきっちりの温度になるまでオーブンで焼き、あとは出して放置するせいなんだけどね。

さて、実は焼いている間にすでに前菜に手をつけている。スモークサーモンのグラブラックスだ。香辛料でマリネしてあるもので、今回は西洋ワサビ(ホースラディッシュ)抜きで、ディル、シャロット、ケイパーにライムを添えてシンプルに。

お待ちかねの丸鶏の味噌バターローストはこんな感じ。
皮は味噌バターのせいでカリカリに仕上がっている。

中から詰めもののごはんを掻き出したら、これが何とまあ美味しいこと。そりゃそうだ、鶏の肉汁と脂が焼いているうちにじっくりとからみついたのだから。わたしはどちらかというと、鶏肉よりこのごはんをもっと食べたかったくらいだ。

鶏肉は味噌バターの香りがふんわりと鼻をくすぐる。ジューシーで柔らかく仕上がっていた。

ワインは南オーストラリアのグラント・バージから2010年コリトンパークのカベルネ・ソーヴィニヨン。果実の香りが強いミディアムボディのワインだ。

デザートも、もちろんクリスマスのお約束だ。そして今年は昭和が香るクリスマスケーキ。いや、バンコクにだってもっと色々なケーキが沢山あるけれど、ケーキのことを思い出したのが夕方でこれしか残っていなかったのだ。

懐かしいイチゴのショートケーキ…のクリスマスバージョン。小さなローソクもつけてくれたので、まるで小学校のときの誕生日パーティみたいに。
でもふんわりと柔らかくて懐かしくて美味しかった。甘さも控えめで優しい味だ。

暑い国のクリスマスだが、ここ数日はエアコンなしで快適な夜を過ごせているバンコクだ。お腹もくちくなったクリスマス・イブの夜は、食後酒のキルシュワッサーを小さなグラスに一杯ちびちびと飲みながら更けていった。
I wish you a merry Christmas!

エカマイの One Ounce for Onion

バンコク・エカマイは15年ほど前はまだ今ほど新しいマンションの乱立もなく、ソイの内側に入れば比較的静かな地域だった。それがあれよあれよという間に車の通りが激しくなり、大型スーパーが開店し、少しずつトレンディな店が増えてきた。

エカマイのソイ12にはその昔住んだことがある。「何にもない」普通の住宅が立ち並ぶ道だった。ところが、ここはお隣の繁華街トンローに直結する道だったこともあり、現在では「エカマイ・ソイ12の珈琲通り」として、数えただけでも9軒ほどのカフェがある。

そのうちのひとつ「One Ounce for Onion」はソイ12からさらに小さな路地を抜けていくとあった。どこにでもあるようなタウンハウスが立ち並ぶ路地で、車が二台やっとすれ違えるくらいの幅である。大きな看板があるわけでもなく、オープンな入り口がなければ見過ごしてしまいそうな場所だが、サングラスやカジュアルウェアなどを売るOnionが右、カフェのOne Ounce for Onionは左側の小さな空間で、外にも座れるようになっている。ここで数人煙草を吸いながら珈琲を楽しんでいるひとたちもいる。カジュアルで居心地がよさそうだ。

お腹がすいていたので、珈琲はあとにしてまずランチを注文した。ドリンク類も色々とあり、特にコールドドリンク類が変わっている。

こちらはバナナクランチ(Banana Crunch)。バナナと砕いたキャラメルアーモンドとヨーグルトのミックスシェイク。ねっとりとした甘さ。

そしてミックスベリーとハーブのソーダ(Mixed Berries and Herb)は、赤い実(たぶんイチゴ)のピュレ−、ローズマリ、レモン、シナモンのミックスで、さっぱりとしている。

どちらもコンビネーションが絶妙だ。パッションフルーツとタイムのソーダ、ジンジャーピーチ、アーモンドキャラメルチーズシェイクなど、他のドリンクも試してみたいものばかり。

ランチとしての軽食は三つしかない。その中から二つ。
カフェお勧めの「グリルド・クロワッサン Grilled Croissant」は卵の黄身と豚ひき肉入りの自家製のスパイシーなトマトソースがついてくる。シンプルな一皿だが、カリカリのクロワッサンをトマトソースと卵の黄身でこってりとしたソースに浸して食べるだけでなんでこんなに美味しいんだろう。

もうひとつの皿は「ガーリックとベーコンのタイ風パスタ Pasta Thai Garlic Bacon」だ。こちらは細いカッペリーニを使い、ベーコン、チェリートマト、ピーマン、スライスしたニンニクにバジルとチリをからめてある。チリがぴりりと効いていて、なるほどタイ風のパスタだ。

最後に珈琲を。これがまたビックリするほど美味しい。バリスタの男性が上手いのかもしれないが、わたしの飲んだFlat White(オーストラリア流の呼び方だが、エスプレッソ珈琲を1ショット、そして泡立てたミルクを注いだ珈琲のこと)はその酸味と苦味がほどよく混ざり合いまろやかな舌触りだ。コーヒー豆はSiam Discovery Centerの有名な珈琲店、Brave Roastersのものを使っているという。コーヒー豆も売っているので、再訪の際には必ず購入しなくては。

そのほかにはデザート類も豊富で、隣のテーブルで注文されたワッフルとアイスクリームとイチゴのデザートに思わず手が出そうになった。

One Ounce For Onionは場所が駅から遠くて多少不便なので、観光客向けというよりは地元のヒップスターたちか近辺の高級マンションに住む駐在の外国人が多い。WiFiも無料なので、ゆっくりと午後の静かな時間を過ごすのに最適と言えるかもしれない。