ダルキースの Café des délices

二週間に一度やってくる1時間目と5時間目しかない日。つまり真ん中の9時35分から2時25分まで授業がない。家に帰ってもいいのだが、往復で1時間以上かかる道のりを考えるとどうも気が乗らない。だが学校にいればどうしても働いてしまうし、何かしら用事が入ってくる。

そう言えば、なんだか素敵なフランス風カフェがあったなあと思いだした。ここで朝ゴハンなんてのもいいかもしれない。学校からなら車で7−8分の距離だ。
大雨の日で残念だったが、なんとか駐車スポットも見つけてカフェに滑り込んだ。雨さえ降っていなければ外に座るのもいいなと思ったが、やはり今日は誰も座っていない。

エッグ・ベネディクトはベーコンかスモークサーモン(追加料金)が選べる。サワーブレッドにホウレンソウが敷いてあり、スモークサーモンがたっぷり。その上にはポーチドエッグがふたつ。そして、オランデーズソースがかかっている。珈琲はすでにミルクたっぷりのフラットホワイトを学校で飲んでいたので、ロングブラックにした。エスプレッソ1杯分にお湯を同じ分量足した珈琲だ。そこにミルクを小さなピッチャーで添えてもらった。

周りを見ると、新聞を読んでいる中年男性やおしゃべりに余念がない奥様方やベビーカーをそのまま隣に置いて携帯電話を覗いている若い女性。この地域は高級住宅街だけあってこんな素敵な店がひっそりと隠れていて、訪れるひとびとの服装もオシャレだ。

支払いを済ませると、隣のショーケースには美味しそうなペストリーやサンドイッチが沢山。後ろにはフランス風のどっしりとした田舎パンや外側がパリパリのバゲットなどが並んでいる。わたしの目がもうショーケースから離れないのを見て、感じの良い店員が微笑みながら「何かおやつをお包みしましょうか」と訊いてくる。「いや、今日はもうお腹がいっぱいだからまたの機会に」と言って店をあとにした。
密かに「朝ゴハンのクロワッサンをここで買って学校に行ってもいいな」だの「また時間が空いたら今度はランチもしたいね」だの「パンをここで買って帰ってもいいな」だのと考えながら。

プロンポン・MクオーティエのD’ARK

冷たい珈琲のときには必ずブラックで注文する。
オーストラリアではIced Long Black(アイスド・ロングブラック)と言うが、アメリカではIced Americano(アイスド・アメリカーノ)と言うらしい。エスプレッソ珈琲に水を加えたものをこう呼ぶ。タイ・バンコクではアメリカ英語が主流だが、オーストラリアからのカフェもかなり増えているので、Iced Long Blackと呼んでいる場所もあり少々ややこしい。

昔の日本の喫茶店では、店を開ける1時間ほど前に大きなフィルターで大鍋一杯のコーヒーを作り、注文が出るたびにそれを小鍋に移して温めて出したものだ。アメリカンはさらにお湯を加え、底が見えるほど薄くしたものをそう呼んでいた。なんでこんなことを知っているかというと、そういう店で大学生のときにアルバイトをしていたからだ。まだ秋葉原に野菜市場があったころの話である。オタクなんて言葉もメイド喫茶なんて店もなかった。

さて、戻ってバンコクの話だ。
高架鉄道で二駅という近さなので、プロンポンのエンポリアムかその向かいのMクオーティエにはよく行く。エンポリアムの場合は5階のKuppadeli(クッパデリ)でIced Long Blackを、Mクオーティエの場合は1階のD’ARK(ダーク)でIced Americanoを頼むことが多い。

さて、今日はそのD’ARKでヘアカット後の午後を楽しんだ。
最近のバンコクのカフェはエスプレッソマシーンが主流だが、こちらではコールドプレスの珈琲も注文できる。アメリカーノと言えども、きちんとエスプレッソマシーンを使ってエスプレッソをつくってからグラスの氷の上に注ぎ、水を加えている。香りもいいし、味もいい。

隣のひとが美味しそうにケーキを食べていたので、マネをしてわたしもレモンタルトを。

レモンジュースをたっぷりと使って仕上げていて、とろりとしたレモンクリームが美味しい。甘さに加減がないところが日本のケーキと違うが、わたしはこういう甘々のケーキも大好きなのだ。「あんまり甘くなくて美味しいね」という感想はタイやオーストラリアでは賞賛にならない。

この店は美味しい珈琲を提供してくれるが、実は夜になれば酒も食事も楽しめるれっきとしたレストランだ。わたしはまだ夜に来たことはないが、一度は試してみたい料理がメニューに並んでいるので次の機会に必ず。

エカマイの (UN) FASHION Cafe

バンコク・エカマイは最近カフェがずいぶんと増えて、珈琲好きとしては大変楽しい散策エリアとなってきた。

エカマイのソイ10角には「Ekkamai Shopping Mall」という一角があるが、最近ではショッピングというより小さなカフェ、バー、レストランなどが立ち並び、連夜若者たちで賑わっている。数年前からそこには小さなヴィンテージものの革製品を売る店もあるが、その隣に今度はカフェができた。それが (UN) FASHION Cafe(アンファッション・カフェ)だ。

外から見るとまるで誰かの家のような椅子とクッションが散らばっていて、狭い店内はとても居心地がよさそうだ。スタッフは若く英語も達者だ。外の椅子にはアメリカ人の親子が座っていたし、ここには結構外国人も来るのだろう。

何となく古びた椅子やらテーブルやらが置かれ、狭い店内はカフェというよりアンチックショップのような雰囲気だ。隣のヴィンテージ革ショップのオーナーのカフェなので、内装が似ているのは当然なのかもしれない。

珈琲メニューはバンコクの標準的なスタイルで、カフェラテ、カプチーノなどが並ぶ。わたしは冷たいカプチーノを注文し、窓際の席が空いていたのでそこに陣取った。クッションが柔らかくやはり快適な小さな空間。ここならゆっくりと1時間ぐらい本を読んだりメールをしたりできそうだ。

窓際にはホームメイドのケーキが並んでいたので、アップルタルトをひとつ切ってもらった。

しばらく待っていると、温かいアップルタルトのひと切れが生クリームを添えられて出てきた。シナモンがたっぷりとかけられた素朴なヨーロッパ風タルトだ。生地はサクサクとしていて香ばしい。

1階は珈琲とケーキだけだが、狭い階段を上がる2階はダイニングエリアとなっていて軽食も楽しめるらしい。わたしはどちらかというと、知人の古びた家にいるような懐かしい空間の「 (UN) FASHION Cafe」で、今度は文庫本でも持ち込んでゆっくりと過ごしたいと思う。