採点しながらすする辛味噌麺

期末近くなると、必ず膨大な量の採点に時間をとられ、週末はほとんど赤ペンを握りしめる生活になります。
今回はトータル768枚の答案があり、クラス人数の多い下級生たちを受け持っているわたしは、またしても学校内でイチバン多い答案保持教師の座を勝ち取りました。
そんなわけで、週末に優雅な料理なんぞしている暇もあらばこそ、気がついたらランチまで忘れていました。ヘンテコな時間ですが、そのまま答案をかついで近くのベトナム料理屋に。

そんな時間にもかかわらず、安くて美味しいと評判の食堂は半分ほどテーブルが埋まっています。わたしは答案を広げるのにちょうどよい4人席にでんと座り、いつものように辛味噌入りの汁ビーフンを注文してから、がりがりと赤ペンを走らせていました。
ドアの近くの席だったので、はいってくる客からわたしのしていることは丸見えです。まあ知っている顔もいないだろうとタカをくくっていたら、ちょうどはいってきた大勢のひとたちの中に見覚えのある8年生の子供の顔が。そしてその後ろから見えるのは、彼女の姉である9年生の女の子。隣には11年生の女の子。ぞろぞろと入ってきたのは、インドネシア系家族総勢9人だったのです。6人兄弟に父母、そしてどうやら祖母らしきひともいます。
わたしはと言えば、ジーンズにくたびれたTシャツ、もちろんすっぴんにド近眼めがねというイデタチです。いやいや、誰にも会いたくないときに限って、こうしたことは起こるものなのです。
「センセー、赤い汁を答案に飛ばさないでねー」とわざわざ笑いながら言いに来た9年生の後姿を見ながら、わたしはそうっと麺をすすり始めました。
(初出:メルマガ「AVANCE!」 No. 124, 04/04/2004)