パース観光の目玉になる「はず」のエリザベス・キーへ

土曜日は朝起きたらなんだか曇り空。昼間の雨の確率は10%以下だというので、友達を誘ってスワン川の散歩へ。

空には依然として雲が多いが、時々晴れ間も見える。Point Fraser(ポイント・フレーザー)に車を停めて川べりの徒歩路を歩き、Elizabeth Quai(エリザベス・キー)まで2.6キロ。ポイント・フレーザーから対岸のSouth Perth(サウス・パース)の眺めは、高層建築がないためか平坦。相変わらず空だけは大きい。

途中で見た花。たぶん西オーストラリア原生植物だと思うが、名前がわからない。

工事のクレーンが見える場所が到着点。曇り空で景色に色が欠けているのとこんなまっすぐな道をひたすら歩くのとで少々退屈なウォーキング。友達と話しながら歩けるのがただひとつの救いか。

30分強ひたすらまっすぐにあるき続けてたどりついたのがここElizabeth Quai(エリザベス・キー)。以前から船着き場があり、住民はあまり気にも留めない(失礼)ベルタワーという比較的新しいタワーもある。高さ82.5m、18個のベルが時間に合わせてリンゴンと鳴る、パースの観光名所だ。

このベルタワーの前を通り過ぎて広場に着くと、こんなふうな眺めが広がる。天気がよかったらもっときれいなのに、とブツクサと言いながら写真を撮った。

パースの高層建築の群れだ。パースは人口200万ほどの小さな州都なので、これでもわたしが住み始めたころより3つほどビルが増えている。

噴水が吹き出すウォーターパークもできた。もっとも、この水が汚染の基準を超えていて一時期水が出ないウォーターパークではあったが。

レストランもいくつか出来上がっているが、やはり子供連れの客には少々敷居が高いとみえ、ハンバーガー屋に客が沢山列を作っていた。つまり、わたしたちもその列に並んだということだ。レストランでひとり4000円以上のランチをするのは予定に入っていなかったので。

このハンバーガーが意外や意外、かなり美味しかった。パンはよくあるファストフードの甘いフワフワのものではなく、かなりしっかりした噛み心地がいい。挟んだハンバーグはきちんと手で成形してあり、牛肉が荒く挽いてある。フライドポテトは、Beer batteredと呼ばれるビールにくぐらせて揚げてあるもので、カリカリとした歯ざわりが残る。V-Burgerは確かウチの近所にも店があったと思うが、まだ行ったことがなかった。

そしてコチラはおこぼれを待つ海燕。あげないよ。海燕に餌をあげると大群で押し寄せることから、こうした外の飲食店ではあまり好まれない鳥なのだ。

少し歩くと恐竜が。隣の催し物会場で恐竜展をやっているらしい。
がおー。

今工事中のビル群は高級ホテルと超高級マンション。つまり庶民のわたしたちには関係のない建物ばかりだ。
週末の散歩にはいいかもしれないが、盛夏に40度を記録するパースではいかにせん日陰が足りない。こんなに日差しの強い場所で何をしろと言うのか…。また、催し物があるときには屋台が立ち並ぶが、今日のようになにもイベントのない週末には行ってもすることがない。
元々パースの繁華街とこのエリザベス・キーはかなり離れている。間にビジネス街が挟まれていて、観光の流れとしては不便だ。交通機関はバスのみ。駐車場は1時間10ドル(約900円)の私設パーキングばかりだ。

全て完成すればまた変わってくるのかもしれないが、建設には州政府に400億円もかかり、また維持費だけで年に約4億円ほどかかる。全て州民の税金にしわ寄せが来るわけだが、それに見合うだけの評判と収入が得られないというのが前政府の最大の失敗と言われる所以だ。

わたしも昨年この新しいエリザベス・キーがオープンしてから初めて行ったが、なにか催し物でもない限り行かないだろうなあ、というのが今のところの感想だ。

帰りはまた歩いてFraser Pointまで戻ったが、近くの沼地でアカライチョウ(Moorhen)がヒナを連れて歩いていた。くちばしが赤いのが特徴だ。カメラを向けると、ヒナを護るためかじっとこちらを見つめている。それ以上近寄るのもかわいそうで、ぱちりとひとつ写真を撮っただけで母子を残してそそくさと立ち去った。

ちょうど顔にふたつぶほどの雨が落ちて「あ」と思ったところだ。そのまま車に乗り込み、スーパーで買い物をしてから家に戻るとすぐに大粒の雨がざざっと降り始めた。

土曜日のその晩は寝られないほどの暴風雨で、風が窓やドアを叩き、外の木々が揺れる音がいつまでも続いていた。

エカマイの Cuisine de Garden

「エカマイに変わったレストランができたよ」とスイス人の友達が言った。何しろ料理はコースがひとつだけ、フロアには本物の木が何本か植えてある。ものすごく芸術的な料理だよ、一度は「見た」ほうがいいよ、と。芸術的な料理というのが気になって、3日早い誕生日のディナーとなった。

 

メニューを見ると、なるほどフルコース料理がひとつしかない。ただし、そのコースはチャプターが4つあり、チャプターごとに3つの料理の中からひとつ選べるようになっている。全て選んでさてワインは…と思ったら、10月5日はオーク・パンサーだった。仏教の「出安居(しゅつあんご)」で酒類禁止の日である。ワインが飲めない。他のテーブルも皆ミネラルウォーターだけしか置いていない。がっかりしたが、まあ酒なしでも料理は楽しめるから、と気を取り直した。

最初はまず自家製の温かいパン。ヨーグルトのように多少酸っぱいクリームが添えられている。皿は本物の木の葉だ。

次に出てきたのはアミューズ・ブッシュと呼ばれるレストランで最初に供されるひとくち大のオードブルだ。タイ料理でよく使われるこぶみかんの味を基調として、左の海老、二番目はムール貝と海藻に泡立てただし汁がかかっていて、黒い貝殻ふうのビスケットも食べられる。三番目はこぶみかんの葉の上に鮭のタルタル、そして最後はライム・ジュースをからめた蟹肉がこぶみかんの実の上に載っている。「左から段々にこぶみかんの味が強くなっていますので左から召し上がってください」とのこと。

さて、ここまでが前菜で、次は3つの中から注文したチャプター1が始まる。わたしの1の皿はSeacret(海の幸とシークレットをかけているタイトル)で、北海道産のホタテ、隼人瓜(はやとうり)、赤い海藻の上に泡立てたゆずジュース。そこに出し汁がかけてある。

もうひとつはRain Forest(レインフォレスト)で、牛肉のタルタル、ビーフ味のチュイール、卵の黄身のソース。

チャプター2はNest(巣)だ。さて何が出てくるのかと思ったら、これ。

温泉卵がカリカリに揚げたビーフンの巣に載っていて、その下にはキノコと鶏肉のミックス。カリカリに揚げたゴボウも添えてあった。どうやって食べるのかわからず、とりあえずウェイターに割ってもらうと…

なんと美しい。
これを崩して下のビーフンと鶏肉とキノコとともに口に運ぶ。ちなみに、殻は一緒についてきたカゴの中へ。

こちらも巣の中ということか。上手い。

もうひとつのチャプター2はEclipse(日食)で、 ドライアンチョビ入りの大麦のリゾットと菊芋(キクイモ)スライス。

次のチャプター3がメインだ。わたしのはWater Lilies(睡蓮)で、オヒョウのグリルに蓮の茎、花、実全てが調理され、セリの一種であるペニーワートのジュースで緑色のソースが作られている。こちらはモネのスイレンの色をイメージしているとのことだ。なるほど。配色が美しい。

もうひとつの皿はVermilion(朱色)で、こちらは鴨肉のコンフィ、ビーツとビーツを使ったソースが添えられている。

最後のチャプター4はデザートだ。わたしが注文したのはBloom(花盛り)で、グァバのシャーベットに小さなブリオッシュとマウンテンハーブが添えられている。

あとの皿はFarm(農場)。ヤギ乳のパンナコッタにマカデミアナッツと蜂蜜巣が添えられている。

最後はStone(石)。その名の通り黒い小石が詰められた箱が出てきた。4つだけチョコレート・トリュフが入っていて、確かめてから食べてくださいねと念を押される。ただし見つけるのは簡単だ。チョコレートだけは汗をかいていたので。

自然をコンセプトとして、タイと世界中の珍しい食材を使い、あくまでも美しく芸術的で、発想豊かなコースだった。確かに不思議な料理である。
見ただけでは何だかわからないので、その都度英語が達者なウェイターが説明してくれる。これがまた面白い。聞き返せばその食材がどこで採れるか、またオリジナルがどんな形をしているのかも教えてもらえて、とても楽しかった。

コースは季節ごとに全て入れ替わるので、わたしたちが食べたのは「秋のコース」だったらしい。次の新しいメニューは11月末に始まるとのことだった。

素材の味を生かしていて、目にも舌にも優しい料理だ。確かに毎日食べたいという普段の食事とはかけ離れていて、素材の珍しさと使い方に目と舌を驚かせ、楽しませてくれる料理と雰囲気だった。一度はお試しを。

エカマイ・パークレーンの白金・酉玉

エカマイもわたしが住み始めたころに比べると、あれよあれよと言う間にスタイリッシュなレストランやカフェ、ショッピングセンターなどがずいぶん増えた。歩いて行けるほど近い場所にも素敵なレストランが色々とあり、最近では遠出をしなくとも近所で間に合わせることが多い。

さて、今回はバンコクに住むスイス人ビジネス旧友から聞いた「白金・酉玉(しろかね・とりたま)」だ。日本人だけではなくタイ人も白人の客もかなりいるようで、和食・焼き鳥の威力を感じる。
パークレーンというスーパーとブティック、そしてレストランの集まった雑居ビル内にあり、エカマイ通りに面した「折原商店」という日本酒バーの裏にあるレストランだ。

焼き鳥というより落ち着いたクラブのような雰囲気で、低く流れている音楽もゆったりとしたジャズだ。居心地がいい。日系の会社がいくつか予約していたようで、立ちんぼでの名刺交換やお辞儀が繰り返され、ここらへんは「和風ビジネス接待」の模様が懐かしい。

メニューはもちろん焼き鳥が主で、鶏の部分の名前と説明が詳しく、わたしもずいぶん知らない部位が沢山あってビックリ。今回は「シェフのおまかせコース」の焼き鳥10本というセットを注文してみた。どんなものが出てくるか興味があったからだ。

おまかせコースには、大根おろしと豆腐の冷奴がセットでついている。なんだかシンプル過ぎて芸がないなあとは思ったが、箸休めにはちょうどよかった。

おまかせコースには他のものがついていないので、取りあえず「海苔サラダ」を。レタスとキュウリのサラダにたっぷり刻み海苔が載っていた。名前どおりなのだが、これもシンプルすぎてちょっと当てが外れた気分。そして、どこから何を取ろうとも絶対に海苔がハラハラと万遍なく四方八方に飛び散る盛り付け。うーん。

さて、焼鳥だ。これはやはり鶏肉の選択と新鮮さで他店とは比べ物にならないくらい美味しい。

つくねとズッキーニ。

ささみの三つ葉巻きと柔らかいもも肉(だと思う)。

ここらへんから次々に出てきて何が何だか。でも、美味しい。

砂肝とうずらの卵。

こちらは追加で注文した銀皮という砂肝のみみ。柔らかくて味も濃い。こういう珍しい部位も別々に食べられるところがやはり専門店だなあと感心してしまった。

そして、こちらがスイス人2人が同時に注文した「ラクレットチーズのいなり包み」。そりゃラクレット自体がスイスチーズなので、本場からきたひとたちはどうしても試してみたかったらしい。

わたしもひとくちだけかじらせてもらったが、これは…失敗だった。パリパリになった油揚げは歯ざわりがいいのでよしとしよう。だが、油揚げの内側に貼り付いてやはりパリパリになったラクレットは、率直に言って香り以外は焼きすぎて油が出てしまいチーズの原型をとどめていない。つまり「ラクレット味の油揚げ」でしかない。これには「スイスチーズの専門家たち」の顔がみるみると曇ってしまい、彼らは何も言わなかったがたぶんラクレットチーズの量があまりにも少ないのと焼きすぎたのが理由だと思う。ラクレットは分厚く切って温めるとびよーんと伸びるほど柔らかく弾力が出るのが特色で、焼きすぎると脂分が分離してカラカラに乾いてしまう。これなら他のチーズを使ったほうがよかったのではないか。ほかのものが美味しかっただけに残念だった。

味に関しては(ラクレットのいなり包み以外は)満足だったが、サービスでひとつだけ、そしてここを手放しでお勧めできないのはそのせいなのだが、改善してほしいことがあった。
10本コースなら1本ずつ焼きたてを食べられると、客は普通思う。食事というのは酒を飲み、会話を楽しみ、そして焼きたての焼き鳥をつまむことだと、普通は思う。特に「高級」を冠した焼き鳥専門店と言うからには、客のペースを見て焼きたてを供するサービスを期待している。

ところが、それがこの店ではできていない。

焼き鳥は焼けた順に次々と皿に載せられ、それも一度に2−3本ずつということが多かった。楽しみながらひとつひとつつまむと言うより、背中を押されているような気分だ。最後の1本が来て「これで最後です」と言われたとき、わたしの皿の上にはサラダをつまんでいる間に冷めてしまった焼き鳥がまだ4本も残っていた。
結局最初の1本から10本目が来るまでの時間はたった30分だ。これでは食事を楽しむどころの話ではない。大勢で来て色々と注文する焼き鳥とは違い、これはコースだ。つまり、客は出てきた全ての10本をひとりで食べなければならない。3本同時に来ては、どれかひとつは確実に冷めてしまう。

「おまかせ」というのは店の自慢の新鮮なものをあしらったコースなのだから、もう少し気配りが欲しかったし、客が焼き鳥を焼き立てのまま食べられないのは店にとっても残念ではないのか。

つまり、「冷めた焼き鳥を食べるくらいなら」アラカルトで1本ずつ注文したほうがよかった。また行くことがあればもう「おまかせコース」を注文しないのは確実。最後に追加で注文した「銀皮」は焼きたてを楽しめたし、「ラクレットチーズのいなり焼き」は反対に15分ほど待たされたのだから。