秋の気配

金柑が色づきはじめた。
12月と1月のウン十年ぶりという40度を越える暑さの中、葉がずいぶんと落ちてしまったが、これで一安心。あと数週間で食べられそうだ。小さな白い花が咲いていたころはとても香りがよく、蜂までぶんぶんとパティオの中に入ってきて閉口したのを思い出した。

こちらに来てから、家の中に座っているより外のテーブルに向かって書いたり読んだりすることが多くなった。街のドマンナカだというのに、空気は澄んでいるし、鳥の声も聞こえる。毎日外に座るから、夏に比べると、確実にさしこむ光が長く低くなったことにも気づく。

もちつもたれつ

電話がかかってきた。去年の同僚教師だ。
「あなたがいなくて寂しいわよぅ」と言いながらも、結局は細かな日本語動詞に関する質問である。このたぐ いの電話は、週に最低一回はある。彼女たちの声を聞くのは、こういうときだけである。「もちつもたれつ」という言葉があるが、それが通用しないのが「こ こ」なのかもしれない、と思ったりもする。
わたしも利用してやろう、と勇ましく決心してはみるのだが、さてどういうときにわたしは「彼女ら」を必要とするんだろう、とハタと考え込んでしまった。

ルビィ色は、わたしの好きな色のひとつである。お酒の飲めない訪問者に、ちょっと変わったものをと買っておいたのが、Sanbitterという、カンパリとほとんど同じ味でアルコールなし、というシロモノ。吹き抜けの窓に置いたら、うれしくなるような明るい色だ。

うん、いい香り

前回のバンコク「里帰り」で、オイルバーナーとアロマオイルを買ってきた。
今までは、部屋の香りといったらお線香タイプが一番だと思っていたが、オイルを燃やすのも雰囲気が変わるので気にいっている。香りはどちらかというと、アジア系がやはり落ち着くようでレモングラスにしてみた。
部屋のあかりを落として、バーナーの四角い窓の間から小さな炎を見る。隣に座って鼻をうごめかせていた猫の目にも、炎がちろちろと動いている。
(写真:バーナーの前にころがっているのは、ミニチュア細工のタイ菓子)