離れている恋人に、余韻を残す会話を

SARSのせいで、悲観している友達がいる。彼、マークの恋人は香港の近くに住む中国人なのだ。カンタス航空が香港へのフライトをキャンセルしてしまった 現在、恋人がパースに来るためには高騰してしまったキャセイ航空を使うしかない。彼女の2週間の休暇のためにそのフライトを予約すると、あまりの高額に次 回のめどがたたないくらいだ。

ため息をつく彼のために、軽い夕食を作って何人か呼んだ。メニューは、洋ナシと生食ほうれん草のサラダ、バジルとマッシュルーム入りトマトソース、そしてリコッタチーズとチキンのはいったアニオロッティ(ラビオリの丸い大型のようなパスタ)。
シンプルで全て30分以内に準備できてしまう料理だが、これにすっきりと喉越しのよいセミヨンをぽんと開ける。

ま だしょぼんとしているマークに、横に
座ったボブが声をかけた。「でもね、会わないってことが、君たちの愛情を高めるってことも考えられる。だって、ほとん ど2日置きくらいに電話してるんでしょ?僕がその証拠だ。」彼は今パースに長期出張中のスコットランド人である。「食べたものとか、見たもの、読んだ本と か、話し出すともう30分じゃ足りないくらいだ。一緒にいたら、いるだけで満足してしまうけれど、離れていて話すと余韻が続くんだ。」楽しいゲストとこん な美味しい食事をしたってこと、話したら彼女うらやましがるよ、と付け加える。
ひとしきり笑いとざわめきの後、マークは「いや、だけどこのサラダとパスタ、ほんとに美味しいや。今夜も遅くに電話をするから、このこと言わなくちゃ」と微笑んで、本格的に口に運び始めた。

これは何でしょう?

ここ1年というもの、わたしはほとんど目覚まし時計のお世話になったことがない。

去年バンコクで亡くした愛犬は、わたしがどんなに寝坊しても辛抱 強くベッドの傍らで待っていたが、ゆきちゃんは違う。朝明るくなるとそろそろと動きだし、6時半から7時の間には、すでに「お腹すいたよー」「つまんない よー」とわめく。じゃ、まずわたしがトイレに行ってシャワーを浴びてからね、などとバスルームに閉じこもってしまったら、大変だ。バスルームのドアの下か ら、手が延びてくる。ふぃ~ん、と鳴いてその手でひたすら床のタイルを掻く。ドアもひっかく。それどころか、ドアをとんとん、と叩きもする。わたしが諦め てドアを開けるまで、それは続く。
ドアの下からのぞく猫の白い足は、毎朝の日常風景のひとつになってしまった。

スビアコの週末マーケット

日曜日になると、週末マーケットに出かける。
スーパーで整然と包まれ ているシナシナしている野菜や果物と違い、ここのは客の呼び込みに忙しい中国系野菜売り場のひとたちと同じように、元気がよくて生き生きとしている。ひと つ手にとると、「それそれそれ、美味しいんだから。1kg2ドルっ。甘いのは保証付っ。ささささ、食べてみてたべてみてっ」と鼻先にぶつ切りにしたばかり の柿がつきつけられる。大きなミカンにそっと触れるとまた「それそれそれも美味しいっ。ここにあるから、試食試食っ。」とまたもやみかんの大きな房がつき つけられる。

いつも「明日と明後日食べる分だけ買おう」と勇んで出かけるのだが、結果は重い袋をいくつも提げての帰宅となってしまうのだ。