パーティに豚の丸焼きはいかが?

放課後に外国語教師のミーティングがあり、その後スーパーで買い物、そしてまだ入院している友達を見舞って時計を見たらすでに7時。もうこれから食事を作 る気力もない。そんなわけで今日は自炊をあきらめ、中華バーベキューの店に寄って、焼き豚、内臓の煮物、豚の耳を買い、ターツァイを炒めてもらった。豚の 耳は売っているところを見ると、ちゃんとした大きな耳のままゴロゴロと並べてあるので、いささかぎょっとする。が、食べてみるとこりこりとした歯ごたえも よく、意外とおいしいのだ。ほかほかのまま家に持って帰り、ご飯だけはささっと炊いて添える。
この中華バーベキューの店は、鴨、鶏、豚肉が色々な 下味をつけて焼いてある。安くておいしいと評判の店なのだが、ひとつだけ許せないのがご飯のまずさ。どうやって炊いたらこんなにまずく炊けるんだ、という くらいグチャグチャである。そこで食べることもできるのだが、そのご飯のせいでわたしは包んでもらって家に持ち帰ることにしている。
そう言えば「豚の丸焼き・要予約」なんてメニューもある。約4万円ほどで豚の丸焼きを用意してくれるのだ。大きなパーティ用にと、週に1度か2度は注文していく客がいるそうである。さすが中国人だ。

友達を救急病院へ

電話をとると、苦しそうな声が聞こえてきた。はて誰だろう、と思ったら友達のひとりである。立てない、と言う。一ヶ月ほど前に坐骨神経痛が出たが、すぐに よくなったのでほうっておいたらしい。昨日パースでセミナーがあり、1日中椅子に座っていたのがよくなかった。昼間すでに腿からお尻に向かって痛みが走るようになったが、夜になってもう長いこと立っていられなくなり、夜中には横になっても痛くて寝られなかったという。
パースでの知り合いで、今のと ころ連絡のつくのはわたしだけだった。車で迎えに行き、救急病院に連れていったら、即入院。明日は精密検査ということなので、身の回り品をとりあえず目に 付くものだけバッグに詰めて、また病院へ。すでに強い痛み止めの注射を打たれたらしく、ぼうっとして目の焦点が合っていない。何だかかわいそうだが、わた しがそこにいてもしょうがないので自宅へ戻る。

一人暮らしというのは、こういうときに困るのだ。わたしなんぞに何か起きたら、ゆきちゃん のことも心配だ。パティオの植物はどうなるんだ。そんなことを考えていたら、色々な「所有物」「生活に必要なもの」が段々と増えてきたことに気がついた。 本当に小さなものから、車のように大きなものまで、実に沢山のものに囲まれている。パースに来て生活し始めたときにはスーツケース1個の身の回り品だった のに、2年半でこのザマである。いつも身軽になりたいと思いながら、ひとつまたひとつと何かしら増えているのだ。デラシネ(根無し草)などと気取っていても、結局は色々な場所にマーキングしてきただけなのかもしれない。スイス、日本、タイ、オーストラリア。どの国にも、実は「わたし印」のついた大量の書籍 とその他様々なものが眠っている。
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今晩はレモン汁とナンプラー、そして様々なハーブでマリネしておいたチキンをグリル。ローズマリーポテトと芽キャベツはオーブンでローストした。こういう料理は、一人分だけ作るのが非常に難しい。だから大量に残ったチキンは、冷凍に。お弁当のサンドイッチ用である。

総務のオネエサンの「軽い」シーザーサラダ

からりと晴れた日。雨交じりの寒い日が続いたあとの晴天は、さすがに嬉しい。こちらの「晴れ」はまさしく雲ひとつない真っ青な空で、はるか彼方までハッキリと澄み渡る。
いきなりそんな天気に恵まれたら、もう外に出るしかない。そして、有頂天になったわたしはもちろんカメラなんぞ忘れ、しかしSP50と書かれたローションだけは塗りたくって飛び出す。

途 中でスーパーに寄り今日の晩御飯の買い物をしていたら、偶然学校の総務のオネエサンに出くわした。「この辺りに住んでいるんですか?」と聞いたら、「いえ いえ、わたしの母がね」との答え。「母からの電話で、土曜日くらいゆっくり一緒に食事をしましょうよ、って言われたから、じゃあわたしがなんか本格的なも のを作るわ、ってことで、今ショッピング中」とほがらかに笑う。タテもヨコもとても大きな女性で、学校出勤の初日に初めてわたしに声をかけてくれたのがこ のひとだった。「なにを作るんですかあ」と聞いたら、「最初に軽くマッシュルームのスープ、そしてラムのローストにローズマリーポテト、ブロッコリーにク ルミのソース、そしてデザートはわたしの母の好きなチョコレートムース。」すごいな、ふたりでこんなに食べるのか、とビックリしたが、その美味しそうなメ ニューに喉がごくんと鳴る。今度必ずレシピを教えてね、ともちろん約束をとった。
そして「あなたは?」と聞かれ、昨日友達と暴飲暴食を楽しんだの で、今日はちょっと軽いサラダでも、と言うと、「シーザーサラダなんか簡単よ」と即座に勧められる。シーザーサラダというのは、レタス(またはこちら豪州 では、コスサラダという手のひらほどの丸い葉を持つ歯ごたえのよいサラダ菜を使う)に生卵、パルメザンチーズ、生クリームにマヨネーズなど、とても「軽 い」とは言いがたいソースを使うサラダである。「いえいえ、これは軽いほうのレシピ。低脂肪ヨーグルト、低脂肪サワークリーム、低脂肪マヨネーズ、白い油 を全部取り除いたベーコン、チーズ味をつけて焼いただけのクルトン、電子オーブン焼きのチキン、そしてアンチョビ。」
教えてもらった簡単なレシピで、今晩の夕食はもちろんシーザーサラダ。軽くて脂肪分もほとんどないが、本当に美味しい。マヨネーズをかけただけのおざなりシーザーサラダを出すレストランもあるが、このソースのほうがはるかに上等で味に深みがある。
偶然よいレシピを教えてもらったが、さすが料理が趣味と言い切るオネエサンだけある。こういうものだけ食べていたら、わたしの3倍はある「豊満ボディ」にはならないだろうが、「美味しいもの」が皆「軽いもの」とは限らないのが、食の世界の楽しさと哀しさなのである。