ノースブリッジのThe Standard

パースのNorthbridge(ノースブリッジ)は、バックパッカーの安宿もあり観光客で賑わう一角だ。安く食べられる店や若者たちのためのクラブやパブなどが混在していて、夜になれば平日でもひとの多い娯楽街と言える。

それでも駅の近くには博物館、美術館、そして数年前に新しく建てられた州立劇場が並び、その周辺には少々雰囲気の違うトレンディーなバーやレストランがポツポツとでき始めた。

The Standardは州立劇場で舞台を提供するブラック・スワン劇団と同じ系列経営のバー・レストランだ。昔衝撃をうけたサミュエル・ベケットの作品「エンドゲーム」を上演している州立劇場からは、歩いて2−3分。

ここではバーも充実しているし、料理もモダンでアジア風の味を取り入れた皿を供していて、その他にもショーメニューという観劇直前の早い時間帯にさっと食べられるコース料理がある。

オーストラリアの舞台は日本と違い、そのほとんどが7時半、8時という時間に始まる。普段の食事とは別に、劇場近くのレストランやパブでショーメニューという特別なコースを用意しているのはそのためだ。
大体1時間から1時間半で終えるような前菜と主菜、または前菜、主菜、デザートがセットになっている。スタッフも心得たもので、こうしたショーメニューの場合は、客が上演時間に遅れないように気をつけてサービスをしている。

The Standardのショーメニューは前菜・主菜・デザートともに3つのメニューから選べるようになっている。今回わたしが注文したのはデザートなしで前菜と主菜のみ。白ワインはボトルで西オーストラリア・デンマーク(ヨーロッパの国の名前と同じだが、こちらは西オーストラリア南部でワインで有名な地域)のRockcliffeの2016年Third Reefシャルドネを頼んだ。スパイシーで少々苦みばしった味の辛口。

前菜は、帆立貝のセヴィーチェ、茶そば、大根とわかめ。

薄切りにした帆立貝は新鮮で甘みがあるが、セヴィーチェにしてはレモンの酸っぱさが香りだけしかないと思ったら、その下にある茶そばがレモン汁で和えてあった。わかめは食感を出すためかカリカリにローストしてある。最近フュージョン料理でよくみる茶そばだが、こんなふうに使うのもおもしろいと思った。

主菜は韓国風バーベキューチキン、ビーフン、ハーブサラダ。

甘辛くマリネしたチキンは柔らかくて、上から振りかけたピーナッツとよく合う。これにちょいと辛味噌をつけて、ビーフンとからめて食べる。そして口直しに、バジルと大根のサラダだ。これは本当に美味しかったので、いつか真似してみたい。

友達が注文した主菜は、ラムの脇腹肉(ベリー)のグリルと腰肉(ロイン)の燻製、コールラビのピクルスとコーンブレッド。

味見をさせてもらったが、ラム肉の燻製がちょっと変わった味だ。燻製だけは自分でつくったことがないのでよくわからないが、スパイスと茶で燻しているのかもしれない。こちらもまた今度は自分で注文してみたい一皿だ。

食事もさることながら、友達もわたしもバーテンダーとホールのスタッフたちに目を奪われてしまった。実際この店は容姿でスタッフを選んでいるのかと思うほど、美男美女が多い。

以前酒を飲みに寄ったことがあるだけだったが、今回コースで料理を頼んでみて、こりゃもう一度ゆっくりと食事(と美しいスタッフたちとのおしゃべり)を楽しみに来なければと思った。

 

小麦粉を使わないニューイングランド風クラムチャウダー

土曜日の買い出しに行ったら、魚屋のオジサンが手を振って「来い来い」と呼んでいる。また何か新鮮なモノが手に入ったのか。
「見てよ、こんな新鮮で大粒のアサリ!」と指差した先には、砕氷の上に大量のアサリがほんの少し口を開けて山のように盛ってある。なんでも西オーストラリアのシャークベイ産だと言う。パースから海岸沿いに850キロほど北上した場所にある小さな湾岸だ。昔は冷凍モノしか手に入らなかったが、このごろでは新鮮なアサリも時々あり、入ったときには魚屋が手を振ってくれるのだ。

これを海水程度に塩を入れた冷水に漬けて2時間。砂が吐き出されたころにベーコンを刻み、セロリとオニオンをブツ切りにし、バターで炒める。柔らかくなったらアサリを入れて、水を半カップ注ぐ。それから 火を高温にして蓋をし、かわいそうなアサリが昇天するのを待つ。

火からおろしたアサリは、このままだと貝殻が多すぎてチャウダーにできないので貝殻から外し、飾り用に幾つか殻付きで取っておく。

先程野菜を煮た鍋に今度は牛乳を2/3リットルぐらい入れ、ベイリーフとタイム(どちらも自宅の庭からむしってきたもの)とサイコロ状に切ったじゃがいもを加えて柔らかくなるまで煮る。20分くらいか。

普通クラムチャウダーと言うと小麦粉とバターをつかってトロリとさせるが「これだと小麦粉くさくっていけねえ」と教えてくれたひとがいて、わたしも彼女の真似をしてミキサーでトロリとさせてみることにした。
バターとベーコンの脂はもちろんスープの上に浮いていて層になっている。こんな具合に。

そして、これを混ぜ合わせてくれるのが本来の小麦粉の役目だ。が、それなしでミキサーにかけることでこの脂がいい具合に混ざり、しかもふわりとしていて小麦粉のねっとりした舌触りと匂いもない。いいことを教えてもらった。

出来上がった「スープ」の野菜をアサリを入れたザルの上から加えて濾し、下にたまったスープだけをミキサーにかける。スープがふわりとなったらミキサーを止めて具と一緒に鍋に戻し、もう一度軽く温めて塩コショウしてオシマイだ。おっと、そして温めているときにクリームを半カップほど注ぐ。これでコクも増すので。

久しぶりに食べたクラムチャウダーだが、小麦粉を使わなかったため本当に軽い舌触りだ。新鮮なアサリもふっくらとしていて美味しい。今度またアサリが手に入ったら酒蒸しにするか、またはトマト味のマンハッタン風クラムチャウダーにするか。食の愉しみは尽きない。

 

スモークトラウト、ルッコラ、ケイパーのフェットチーネ

わたしの家で今のところ大活躍しているパスタマシーン。それについては以前「パスタマシーンでつくる自家製パスタの世界」という記事にもした。

まあ確かにささっと茹でるだけの市販のドライパスタと違い、粉と卵と水をマシーンに入れたりと手間はかかっているが…段々とできあがっていくパスタを見ているだけでもちょっと楽しい。今回は平たいフェットチーネで。

フェットチーネができるあいだに、申し訳ないぐらい簡単なパスタソースを作ってみた。材料は、レモンジュース、エキストラバージンのオリーブオイル、塩コショウ、刻んだ唐辛子、つぶしたニンニク、塩コショウ、ケイパー。これを全部小さなボウルで混ぜておく。
そして、スライスではなく塊で売っているほうのマスの燻製をほぐしておく。たぶん塩焼きしたマスの残りでも美味しいと思うんだけど、まだ試したことはない。あとは新鮮なルッコラを両手に乗らないくらいたくさん。

パスタが茹で上がったら、ソースを入れてざっとまぜてからマスの燻製とルッコラを加える。パスタはドライでも構わないし、そうするとソースや具の準備はその間にできるから、15分ぐらいしかかからない何とも手間なしの料理だ。

いつも思うんだが、出来合いのピザやお惣菜を「買いに行くだけの時間」でできてしまう料理というものもある。