がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

夜明けの竜巻

今晩は、また大雨だ。月曜日ほどひどくはないが、夕方の道路は水があふれ気をつけてゆっくりと運転していかないと、歩道を歩くひとびとにざんぶと水をかけそうになる。

実は、月曜日の暴風雨は何百万ドルにものぼる被害を及ぼしたのだ。
例によって、朝はバタバタと忙しいわたしはニュースも見ずに車で家を後にした。月曜日は、十一年生の口答試験の日だ。八時半からひとりひとり24人分の日本語インタビューを、わたしと同僚が一組となってテストすることになっていたのだ。

さて、外に出てみるとなんだか道がいつもより混んでいる。しばらく行くと、信号にライトがついていない。停電か、故障か。十字路をやっとのことで通り抜けると、今度はもっと道が混んできた。高速道路とスワン川の上を走る橋が完全に封鎖されている。わたしの学校はこの先にあるので、どうしても渡らなければならない。誘導された左端の道路から抜けて何キロもの遠回りをし、やっと橋から2キロほどの地点でまた同じ道に合流した。

そして、驚いた。

道路わきに植えられた街路樹が、枝をもがれて倒れている。もぎとられた枝が道をふさいでいる。ビデオ屋の屋根がはがれかけている。大きなゴミ箱が横に投げたおされている。まるで台風が通過したような光景だ。付近一帯が完全に停電しているようで、交通信号はどれも光を失い警官が誘導している。
いつもは聞き流しているラジオの交通情報に初めて耳をかたむけた。
何と、わたしの通う高校からほんの1キロほどしか離れていないビクトン小学校は、完全に破壊されてしまったらしい。暴風雨の中、朝六時ごろ小さな竜巻が近辺を荒らしたのだった。

竜巻は、通り道にあるものを破壊するが、圏外のものはそのまま無傷のことが多い。あとから聞いた話では、破壊された小学校の2ブロック先に住んでいた教師の家では、停電だけで被害がなかったと言う。
渋滞と迂回のために、試験があるからといつもより十分ほど早くうちを出たわたしは、いつもより三十分遅く学校に着いた。木々や背の高い繁み、そしてかなり古い建物を持つ学校に、直接竜巻が通らなかったのは幸運だったが、たくさんの生徒が遅刻、そして試験に遅れた上級生もいる。

しかし、あと30秒で試験がスタートという時、うろうろしながら腕時計とニラメッコをしていた同僚は「ああ、よかった」と胸をなでおろし、わたしが竜巻が被害を及ぼした地域で働いていることを知っている友達が二人、携帯に伝言を残していた。

 

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