タスマニアへ:ビチェノでタスマニアデビルのナイトツアーに参加

4月18日(月)
こんな何もない鄙びた町に何しに来たの?と思うかもしれないが、ここは絶景のフレイシネ国立公園にも近く、タスマニア東部の旅の拠点なのだ。夏はマリンスポーツと美しいビーチの休暇を楽しむ家族連れで賑わうというが、今はすでに冬の始まり。観光客と言えば、つまり「ペンギン」か「タスマニアデビル」のために滞在しているひとが多い。

ビチェノの北側ダイヤモンドアイランドの対岸に、世界で最も小さいリトルペンギンのコロニーがある。そして、毎晩この巣に帰るペンギンの群れを観察するナイトツアーがあるのだ。わたしもどちらにするか迷ったが、ペンギンはリトルペンギンではないにせよ、実はパース近郊のロッキンハムにもツアーがある。タスマニアデビルはパース動物園にはいるが、昼間は寝ているので起きている姿を見たことはない。
そんなわけで、今回はタスマニアデビルのナイトツアーをすでに予約しておいた。

TasmanianDevil_1888Mike Lehmann, Own work, copyleft: Multi-license with GFDL and Creative Commons CC-BY-SA-2.5 and older versions (2.0 and 1.0)

すでに軽い夕食を済ませ、ミニバスの待つ町でただひとつのスーパーマーケット駐車場へ。客は全部で11人。最後に乗り込んできた中年の女性は子供を4人連れてきていて、「お子さんにもシートベルトをつけさせてくださいね」という運転手(兼ガイド)の男性の言葉にやんわりと「孫なんですよ」と。ずいぶん若いおばあちゃんだなあ、と思ったのは誰しも同じとみえて、ひとりの年取ったご婦人が「お若いおばあちゃんねえ」とニッコリ。悪い気はしない「おばあちゃん」もニッコリ。車内の雰囲気も和やかになった。

さてバスで向かったのは、アプスリー保護地区と呼ばれる野生動物保護区域。昼間はハイキングをするひとや野鳥を観察するひとも多いが、夜は闇に包まれて夜行性動物たちの独壇場と化す。もちろん夜は鍵がかけられていて、一般のひとは入れない。鍵を開けた運転手(兼ガイド)が乗り込んで出発すると、そのヘッドライトに照らされて、カンガルー、ワラビー、ウォンバット、ポッサム、ガチョウ、ウサギなどが目を光らせてこちらを見る。

保護地区内にはさらにもうひとつゲートがあって、ここからはタスマニアデビル保護区となる。現在のところ、オスが4匹メスが6匹。1941年にはすでに保護法が成立しているが、25年前にたった1匹のデビルが突然変異を起こして、病気を次々と伝染させていった。1996年に初めて公式発表された「デビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)」がそれだ。この病気のため、ここ10年で個体数は30%にまで激減し、2006年にはオーストラリア政府から絶滅危惧種(最も絶滅が危険視されている種)の認定を受けている。

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その後、保護区と研究所共同で予防接種を開発、現在保護されている10匹に投与し、数ヶ月で発病を見なければ保護区から野生に戻すという。ただし、獲物または死骸を「その場」で食べる習性があるため、車に轢かれることが非常に多く、去年離した75匹のうち22匹が交通事故により死亡したと報告されている。

明け方と夕方の車の運転には細心の注意が必要、と言われるのはそのためだ。そしてもし野生動物を轢いたら必ず死骸を路肩に移動させなければいけない、という暗黙の野生動物保護の常識が地元にはある。タスマニアデビルだけではなく、そのほかの野生動物たちもその場で死骸を食べることが多いからだ。

今回のタスマニアの旅でもかなり沢山の動物の死骸を見た。全て交通事故である。いかにタスマニアに野生動物が多いかの証拠でもあるが、今回わたしがあまり運転しなかったのは、1日に何度も死骸を見つめ、それを避けながら運転するのが耐え難かったからだ。

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デビル保護区には小さな小屋があり、中に入ると半円形にカーテンをひかれた舞台(のようなもの)を囲んでカウンターとスツール。まるでバーだ…と思ったらホントにチーズのおつまみと白か赤の地元ワインが提供された。運転手兼ガイドはそれだけでなくウェイターからお土産の売り子まで全てひとりで務めている。
そして、「この見学は静かにしていないとデビルに逃げられてしまいますからね」と念を押され、カーテンがさらさらと開くと…そこにはスポットライトに照らされたタスマニアデビルがワラビーの死骸をむさぼっていた。

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静かに解説をするガイドの声だけが柔らかく響き、それ以外に聞こえるのはスピーカーから流れるデビルのお食事の音。歯がするどく、骨を砕く音までマイクで捉えている。
なんだかよく映画で見る「踊るストリッパーたちの丸い舞台を囲んで見上げるカウンターの客たち」のようだが、音楽があるでもなくしーんとした不思議な雰囲気である。

こちらは1匹目のデビルが食べ飽きるのを待っている2匹目。ガイドの話では、デビルは自分の身体の半分の重さの獲物を1日に摂る。だから、ワラビー1匹の死骸は朝になるまでにあとかたもなくなっているという。

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タスマニアデビルはカンガルーと同じく有袋類だが、袋はお腹ではなく背中についている。そして、約30匹生まれた子のうち育つのはなんと4匹以下だという。生まれたときは、目も見えず耳も聞こえず、後ろ脚が2本しかない。前脚はまだできあがっていないのだ。

こちらはなんとか撮影できた動画。暗いのであまりハッキリとは見えないが、それでもタスマニアデビルのお食事風景はわかると思う。

獲物を取り合って喧嘩することもあるらしいが、今晩はそんなこともなく、客たちはワインを飲みチーズをつまみ、デビルの食事風景を見ているだけだ。でも、その1時間半の間じゅうガイドが話し続けているので、結構楽しく過ごすことができた。

またミニバスに乗ってモーテルに戻るとすでに10時過ぎ。疲れ果ててベッドに倒れこんだあとのことは全く覚えていない。わたしの不眠症は一体どこに行ってしまったのだろう…。

 

 

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